2024.09.27 22:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる人生相談Q&A
幸せな人生の極意!
第206回 交通事故の後遺症を乗り越えた人を教えてください
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「家族が事故で入院しています。同じような苦しみを乗り越えた人を教えてください」という質問に対してお答えします。
日本における交通事故は年間30万件(2023年/警察庁の統計)です。
その中で近年の年間死亡者数は2500~3500人になり、重傷で入院する人の数は約3万人になります。
一日平均で800件以上の交通事故が起こっているという現状ですから、他人事(ひとごと)ではありません。
交通事故の後遺症で苦しむ人も多くいることでしょう。
その中で、事故の逆境を乗り越えた家庭を紹介します。
そのかたは、井上裕之さんです。
井上さんは、東京歯科大学大学院を修了し、歯学博士、経営学博士となり、ニューヨーク大学など国内外七つの大学で役職を務めるエリート歯科医師です。
1994年、31歳の時に地元の北海道・帯広で「いのうえ歯科医院」を開業しました。
27歳で結婚し、子宝にも恵まれるなど、順風満帆の人生でした。
1998年1月3日、井上さんが34歳の時、家族で旭川へドライブに出かけます。
奥さんが運転し、助手席に井上さん、後部座席に4歳になる娘さんが乗っていました。
雪が残る坂道で正面衝突の交通事故に遭い、運転していた奥さんが重傷となりました。大量出血で病院に運ばれ、8時間に及ぶ大手術を受けます。
医師が、「最善を尽くしましたが、この先は分かりません。この状態で助かった事例はありません」と告げたように、1カ月、2カ月たっても奥さんの意識は戻らず、植物人間状態でした。
奥さんの母親がずっと看病しました。井上さんも週末に片道4時間かけて旭川の病院に通って看病し、日曜の夕方に帰る生活を繰り返します。井上さんは、得体の知れない恐怖感、精神不安定な状態に陥りました。
その時、今まで読んだことのない自己啓発・成功哲学の本を読みました。
「心の中に限界を設けない限り、人生に限界なんか存在しない!」(ナポレオン・ヒル)
「全ての人は思いどおりに生きています。もし、今の現実は決して思いどおりでないというなら、思い方、願い方が間違っているのです!」
「人生は選択の連続ですが、一番重要な選択は、あなたの心の内で行われる選択です!」(ジョセフ・マーフィー)
このような言葉で心が楽になり、どんな状況にあっても目標を持って行動しようと思えるようになります。
事故から3カ月後、奇跡的に妻の脳波が動き出し、意識を取り戻しました。
井上さんは、「なぜ、奇跡が起こったのか?」について、次のように振り返ります。
「私はICU(集中治療室)に入って助かる人と旅立つ人の違いは、諦めない思いの強さ、何よりも家族が寄り添う時間にあると実感しました!
家族が『妻を救いたい!』と、本気で行動し続けたからこそ、周りの医師やスタッフのかたにもその思いが伝わり、本気で妻のために手を尽くしてくれたように感じます。
ですから、本気の思い、エネルギーは波紋のように広がって人々の行動を変え、それが奇跡につながっていくのです」
このように、井上さん家庭の姿を通して諦めない思いの大切さや本気の思いは広がっていくことを教えられます。
さらに、事故のせいで失ったものは多くあったでしょうが、事故のおかげで深まった家族の心の絆は永遠の輝きを放つものになったのではないかと推察します。
逆境を乗り越えようとする中で、本質的な成長と発展がなされることを教えられます。
【参考】
警察庁Webサイト、人間情報誌『致知』2023年8月号