2024.09.13 17:00
青少年事情と教育を考える 276
日本の高校生、“SNSで他人の悪口を書き込むのはダメ”
ナビゲーター:中田 孝誠
先日行われたパリ五輪では、選手に対するSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上での誹謗(ひぼう)中傷が大きな問題になりました。
こうした特定の個人に対する行為をはじめ、SNSの問題は世界的に深刻化しています。
オーストラリアでは14歳未満の子供のSNS利用を禁止する法案が検討されていて、こうした動きは欧米諸国でも進んでいるといいます(共同通信2024年9月10日付)。
子供たちのSNS利用について、高校生を対象にした調査結果が7月に公表されています。
日本、米国、中国、韓国の高校生を対象にした国際比較調査です(国立青少年教育振興機構『高校生のSNSの利用に関する調査報告書』。2023年9月〜2024年1月に調査。日本4356人、アメリカ1512人、中国7750人、韓国1508人の高校生が回答)。
これによると、SNSを利用している高校生は各国とも9割以上で、日本の高校生の利用時間は平日が「1〜2時間未満」(26.7%)から「2〜3時間未満」(25.3%)ですが、休日には「5時間以上」が27.2%など、7割の生徒が3時間以上でした。アメリカは休日で「5時間以上」が29.6%です。
大きな社会問題になっているSNS上での悪口や嫌がらせについて、そうした被害を受けた経験が「ある」は、日本は4.3%で、アメリカの30.4%、中国11.8%、韓国10.1%より少なくなっています。
また、悪口や嫌がらせのメッセージやコメントを送ったり書き込んだりする行為に対して「何があってもダメ」という回答が89.2%で日本が最も高く、「その人の自由」という回答は2.7%で最も低くなっていました。
少なくとも高校生の年代では、SNS上で問題ある行為はしないという規範意識が強いようです。
興味深いのは、日本は「リアルの友人よりもSNSで知り合った人のほうが気持ちを伝えやすい」が18.5%、「友達と直接話すより、SNSを通じたほうが気持ちが伝えやすい」は26.7%で、どちらも他国より20ポイント前後低くなっています。
SNSを通じて知り合った人が「いる」は各国とも半数前後で、日本は49.2%ですが、友達とは直接話したいと感じる高校生が多い傾向が見られました。
この他、SNSの利用によって、日本の高校生は「趣味や興味のあることが増えた」(88.8%)、「社会への関心が高くなった」(55.9%)などの効果があったと感じています。
一方で、「学習に対する意欲が高くなった」は他の3カ国が4割台だったのに対して、日本は25.8%で最も低くなっています。「時間を管理する能力」も「低くなった」という割合が4カ国で最も高いという結果でした。
ちなみにある研究では、リアルに人と会うほど幸福感が増し、SNSを熱心に利用している人ほど孤独を感じるという研究もあります(アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』新潮新書)。
若い世代にとって、なくてはならないものになっているSNSですが、良い効果と課題、付き合い方をしっかりと学んでいく必要があると思います。