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【B-Life『祝福家庭』コーナー】
『祝福家庭』104号(2022年春季号
「本性美」入門講座 5
心を磨く美しい所作

ビューティー・アドバイザー 松橋陽子

 母方の祖父が禅寺の住職をしていた関係で、禅の教えに触れる機会がありました。その教えの中に、「身口意(しんくい)の三業(さんごう)を整えよ」というものがあります。
 これは、身体(行い)、口(言葉)、意(心)という3つの業(行為の結果としての宿命)を意識して生活することにより、心と体が一つに整う、という教えです。

 そのためには、「身業(しんごう)口業(くごう)意業(いごう)」の3つを整える方法を知らなければなりません。

 身業は、Ⓐ姿勢を正しくし、Ⓑ所作を整えて、Ⓒ相手の立場で考え行動することで、整えられていきます。

Ⓐ正しい姿勢と呼吸
 立つ、座る、歩くの3点にはそれぞれ、人体の構造に合った正しい姿勢があります。イラストを参考にして、この3点を実践してみましょう。

・立つ 耳、肩先、腰、くるぶしが一直線になるように意識し、頭のてっぺんにある「百会(ひゃくえ)」(人体のツボの1つ)からひもで上に吊るされているとイメージして立ちます。

・歩く 立つときの正しい姿勢から、重心を前に移動し1歩ずつ踏み出します。骨盤から足を出すようなイメージです。

・座る 椅子の場合は、背筋は床と垂直に、テーブルと腹との間は、拳1つ半ぶん空け、浅く腰掛けます。骨盤を立て、足は組まずにまっすぐ床に下ろします。また正座の場合は、頭と尾てい骨を直線で結ぶ姿勢で座ります。女性はひじを少し曲げ、太ももの上で両方の手を軽く重ね、指先をそろえます。男性は、太ももの上に軽く手を置きます。茶道で正座の正しい方法を学べば、足がしびれることもありません。

 形だけまねすると、心がともなっていないため、次の日には忘れて元に戻ることが多いものです。常に正しい姿勢で立ち、歩き、座ることを意識して生活しましょう。

 呼吸は、へその下にある「丹田(たんでん)」を意識して行います。呼吸法については、声楽、武道、密教など、各分野で数多くの指導法があります。しっかりとした指導者のもとで行う必要があるため、ここでは省略します。

Ⓑ所作を整える
 簡単に言うと、所作とは立ち居振る舞いのことです。日本の文化の中には、所作について指導してくれるものが多く存在しています。伝統的宗教、食の作法、武道、茶道、華道などです。

 前述の祖父は、修行僧に修行の一環として茶道も教えていました。私も子供の頃から、母の勧めで茶道を習いました。その美しい所作に惹かれ、大人の時期も含めて10年ほど、茶道を学びました。

 これらの実体験から、茶道の所作には多くの学ぶべきものがあると感じています。
 「茶を点(た)てる」ための所作の順番を形だけまねしたのでは、おいしいと思える一服は点てられません。丁寧な所作で、心を込めて点てた一服は、客の心を癒やします。内面と外面が一致しなければ、所作を整えたことにはならないのです。

 一つ一つの所作の背景にある意味を考え、「茶聖」と称された千利休による「利休七則(りきゅうしちそく*)」の教えを実践し、心の込もった所作と自然な立ち居振る舞いができてこそ自分の中に自信が生まれ、そこに本来の美が宿ります

*利休七則
・茶は服(ふく)のよきように――心を込める
・炭は湯の沸くように――本質を見極める
・夏は涼しく、冬は暖かに――季節感を持つ
・花は野にあるように――いのちを尊ぶ
・刻限は早めに――心にゆとりを持つ
・降らずとも雨の用意――柔らかい心を持つ
・相客(あいきゃく)に心せよ――互いに尊重し合う

 茶道の「お点前」を学ぶことで、所作の精神性と芸術性を高めることができるのです。

Ⓒ相手の立場で考え行動する
 利休が遺した「和敬清寂(わけいせいじゃく*)」の教えは、相手の立場で考え行動するという精神で貫かれています。

*和敬清寂:千利休の茶道の精神・境地を表した言葉。茶の湯において、主人と賓客がお互いの心を和らげて謹み敬い、茶室や茶会の雰囲気を清浄にするという意味。

 これは、禅の教えとも深く関係しています。
 口業は、愛情の込もった、生命のある言葉を使うことで整えられます。これについては、次回(6回目)説明します

 意業は、一つの思いにとらわれるのではなく、広い視野と柔軟な心で人に対することから整えられていきます。これは世の中の理(ことわり)を学ぶことで、このような境地に至る道が開かれると思います。

 身業、口業、意業の3つを意識しながら、日々反省し、自身を鍛錬して心身を整えると、これらが生活化されるようになります。それによって初めて、人が本来持っている内外の美しさである「本性美」に近づくことができるのです。

真の父母様のみ言
 歩くときは、バランスのとれた歩き方をしなければなりません。バランスのとれた歩き方をしているかどうか、いつも考えなければなりません。そして背中が曲がっていてはいけません。頭からまっすぐに立たなければなりません。……

 女性がどこかに行って座るとき、寄りかかってはいけません。東洋では、女性が寄りかかって座ることはしません。女性が寄りかかって座ると、赤ん坊に支障が起きるのです。妊娠すれば大変なことになるのです。
(光言社刊『天運を呼ぶ生活』38〜39ページ)

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 このような内容が盛りだくさんの『祝福家庭』を、是非一度手にとってみてください。

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