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青少年事情と教育を考える 272
地域のつながりつくる「社会教育士」

ナビゲーター:中田 孝誠

 「社会教育士」をご存じでしょうか。
 文部科学省のウェブサイトには、「人づくり・つながりづくり・地域づくりにいま、社会教育士が必要です」と強調されています。

 地域には、例えば子育てや介護による孤立、商店街などの町づくり、子供や若者の居場所づくり、防災、地域コミュニティづくりなど、さまざまな課題があります。

 こうした課題を地域全体で解決していくために地域の人たちの主に教育活動(学びの場をつくるなど)を支援し、豊かな地域づくりを実現するため活動するのが社会教育士です。
 制度は2020年度に始まり、現在は約7000人います。

 もともと社会教育の分野には「社会教育主事」という、教育委員会から発令される教育の専門職があります。
 それに対して社会教育士は、試験を受けて取得するような“資格”ではなく、一定の講習や養成課程を修了した人に与えられる “称号”です。

 地域コミュニティの活性化を目指して、例えば公民館や図書館などの社会教育施設、学校や企業、行政、NPO(非営利組織)をはじめ、地域の身近な分野で活動すると考えていいでしょう。

 ただ、社会教育士を名乗るには、大学の社会教育主事養成課程を履修するか、社会教育主事の講習を受講する必要があります。
 つまり、一定レベルの専門性、さらにはコーディネート能力が求められています。

 実際の活動事例では、地域福祉で「健康づくりからまちづくり」を進めている人や、防災の取り組みとして「共助」の意味を理解する学び合いの活動をされている人などが紹介されています。

 今年6月に文部科学省の中央教育審議会専門部会が出した提言では、社会教育の実践的な能力を身に付け、社会課題の解決に向けた活動が展開できるよう、社会教育主事や社会教育士などの社会教育人材の量的拡大が必要であると述べています。

 もちろん期待されるような広がりや成果が今後出るかは分かりませんが、社会教育士が誕生した背景には、地域のつながりの希薄化、弱体化が進み、家庭や地域の問題が深刻化している中で、その再生を目指して専門人材が求められているという事情があると思われます。