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孝情を育む 31

 『ムーンワールド』で連載された、蝶野知徳・家庭教育部長による子育てに関するエッセーを毎週金曜日配信(予定)でお届けします。
 孝情を育む子女教育について、どんな姿勢で向き合えばいいのかを分かりやすく解説しています。

家庭教育部長 蝶野知徳

英才教育の是非

子女の適性を見つめる
 英才教育について考えたいと思います。その是非は、一概に判断ができません。
 幼い時期から子女に語学、音楽、スポーツなど、さまざまな習い事をさせて、本人が積極的か消極的か、あるいは身についたか、つかなかったかなど、個人差はあっても、無駄になるものはありません。

 ただ、それが子女自身の情操の発育を妨げてしまったり、資質(または性質)に合わない能力を親の過度な期待の中で強制し続けたりする場合は、良い結果をもたらさないかもしれません。
 むしろ、本来持っている才能を見落として、その才能を自覚させる妨げとなる場合もあります。

 親が、子女に何かを身につけさせようとする気持ちは分かります。それに伴い、子女をよく観察して、持って生まれた“生来”の性質を見極めることが、何よりも重要ではないでしょうか。

 英才教育によって、ある程度の「能力」を、後天的に伸ばし強化することは可能でしょう。しかし、子女自身が持って生まれた「適性」というものは、変えられないのです。

生まれ持った性質を発揮させる
 教育によって、子女をゼロからつくり上げられるわけではありません。生まれ持った性質を、いきいきと発揮させてあげることが、子女自身にとっても、家族にとっても幸せなことであるはずです。

 よくドキュメンタリー番組などで、「恩師の一言が自分の人生を成功に導いた」という話を聞きます。その本質は、“恩師の一言で成功した”のではなく、その言葉を受け止める本人自身の感性が、まず主体としてあったからです。恩師の言葉は、自分の資質を発見することのできた、トリガー(契機)の一つにすぎません。

 ですから、同じ言葉を聞いた人が皆、成功するわけではありません。そう考えると、「体験」というのは、「自分自身を知っていく過程」でもありますから、親が日頃から、よく子女の心情報告を聞いてあげることも、本人の適性を知るうえで、大切な材料になると思われます。

 英才教育を早期に受けても、自分の素質が見いだせていないとすれば、本人も苦しいでしょう。自分に合っていない分野で、喜びを得ていくのは、非常に難しいことです。

 子女を育むとは、子女自身が持っている本来の能力を発揮させてあげることです。親の願っている能力を付け加えることが、子女を生かすことになるとは限りません。

 幼児期においては、普遍的な知育、体育、信仰(道徳)、食育などを土台として進めながら、個別に関心を持って気持ちをよく聞き、それぞれの適性を見極めてあげることを大切にしたいものです。

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 次回は、「子女の信仰教育の基礎」をお届けします。


◆「孝情を育む」が書籍になりました! タイトルは『子女と向き合うことは神様と向き合うこと』
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