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心をのばす子育て 42

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

5、知の教育

②頭の知的教育

■子供の才能をつぶすもの

●人との比較
 子供のもっている創造性・才能・個性というものは「人とは違う」ものです。ですから、これらに注目するなら人と比較することは全く意味がありません。

 ウサギと亀の競争の昔話があります。ウサギと亀が競争をして、最初は当然ウサギが勝っていますが、途中で寝てしまい、亀が勝ってしまうという有名な話です。それを通して、親は子供に「あなたは今は亀でも頑張れば一番になれるわ。頑張ってね」と励ますのです。

 でも、よく考えると亀はウサギが寝ている横を通るわけですが、どうして起こしてあげないのだろうと思いませんか。寝ている横をしめしめと通る姿は受験で競争している友達を油断させて、その間に抜け駆けをしようとする子供の姿にダブります。
 本来ウサギと亀が駆けっこをしたら、当然ウサギが勝ちます。しかし、ウサギと亀が海に行って泳ぎの競争をしたらどっちが勝つでしょうか。当然亀です。どちらが優れていますか。
 ウサギは駆けっこが早いという個性をもっていますし、亀は泳ぎが早いという個性をもっています。それぞれに素晴らしい個性をもっているのに、それを認めず一つの価値観で競争するから問題が起こるのです。子供にもいろいろな個性や価値観があります。

 ある学校では競争は子供を差別するという理由から、運動会でも順位が着かないようにしています。あらかじめ走って、同じくらいの子供どうしで走らせたりするのです。学校でいくら競争をなくしても、現実社会の中では入試も会社の仕事も、すべてが競争の中にいます。
 競争が悪いのではありません。競争はやる気を出させる一つの方法でもあります。
 問題は競争の種類が少なすぎることと、そこに人を差別するなどのゆがんだ考え方が入ることです。その数少ない価値観で人を判断することが間違いなのです。個性に合わない部分で人格を否定してしまっているといった現象が起こっています。

 昔は子供の数が多かったので、親は子供の個性に合わせた道を考えました。跡継ぎは一人でいいのです。後の子は個性に応じて手先が器用な子は大工や料理人に、頭の良い子は学校に、口の達者な子は商人にと、それぞれの道を親は考えたものでした。
 ところが最近は子供の数が減ったので個性や適性が合わなくても、みんな良い学校へと進ませるのです。

 子供はそれぞれに素晴らしい個性をもっています。子供のもっている個性を大切にしようと思うなら、人と比較しないことです。

 もし比較するなら、その子の過去との比較です。「前はできたでしょう、どうして今はできないの?」というのは問題がありません。「お隣の何々君はできるのに、どうしてあなたはできないの?」と言うと、その子のもっている良さが見えなくなります。その子の個性を見つめていくということを心構えにするのです。

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 次回は、「心を育てるには」をお届けします。