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青少年事情と教育を考える 268
中学生の「結婚」への意識

ナビゲーター:中田 孝誠

 昨年1年間の出生数や合計特殊出生率が大きなニュースになっています。
 昨年生まれた子供は72万7277人で過去最少、一人の女性が産む子供の数を示す合計特殊出生率も1.20で過去最低でした。

 さらに言えば、婚姻の件数も47万4717組で、戦後初めて50万組を下回りました。
 この欄でも度々取り上げているように、少子化が進む最大の要因は「未婚化」といわれています。
 若者の結婚意欲が低下していることを示すデータもあり、少子化問題では婚姻数に注目する必要があります。

 先月公表された厚生労働省の「第13回21世紀出生児縦断調査」に、結婚に対する若者の意識の一端を示すデータがありました。
 ただし、回答したのは13歳、学年でいうと中学1年生の子供たちです(2万人余りが回答しています)。

 結婚についての質問に対して、「20〜24歳で結婚したい」という子供が男子9.0%、女子15.3%、「25〜29歳でしたい」が男子15.9%、女子19.9%でした。「30〜34歳でしたい」が男子3.7%、女子1.9%、「結婚はしたいが時期は考えていない」子も男子8.8%、女子9.7%いました。

 男子ではおおよそ4割、女子では5割近くが漠然とでも「結婚したい」と考えているわけです。
 それに対して、「結婚はしたくない」と答えたのは、男子4.0%、女子6.8%です。
 最も多かったのは、男女とも「具体的にはまだ考えていない」で男子55.1%、女子43.6%でした。

 もう一つ、最初の子供を持つ時期についての質問では、最も多いのは「具体的にはまだ考えていない」で男子58.4%、女子46.5%ですが、次いで「25〜29歳で持ちたい」も男子14.6%、女子21.2%になっています。

 また、今回の子供たちは2010年(平成22年生まれ)ですが、2001年(平成13年生まれ)の子供たちと比較すると、20代で結婚したいという子が減り、「結婚はしたくない」や「具体的にはまだ考えていない」が増えていました。

 もちろん、中学生になったばかりですから、将来像、まして結婚や子育てへのイメージが固まっていないのも当然でしょう。
 ただ、結婚に対する若者の意欲が低下傾向にあることは確かです。

 例えば、ある調査では「一生結婚するつもりはない」は男女とも十数%で上昇傾向にあります(国立社会保障・人口問題研究所「2021年 出生動向基本調査」)。

 では、日本の少子化問題について、今後どのようなことを考えるべきなのでしょうか。筆者は国民全体で考えるべきこととして、2点挙げたいと思います。

 以前も紹介しましたが、若い世代の未婚化に「親の過干渉」を指摘する意見があります。
 少子化と人口問題を研究するニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は、親の過干渉が若者の結婚する力を奪っているというのです。

 「過干渉はそれが長期化すればするほど、子ども自身の価値観構築を阻害し、自立して誰かと家庭をつくる力を奪い取る結果にもつながっていきます」(『データで読み解く「生涯独身」社会』宝島新書)。

 もう一つ、少子化問題が専門の松田茂樹氏(中京大学教授)は政府の委員会で、就職と結婚、出産と子育てが連なっていて、より良い情報が必要であることを強調しています。

 「(結婚対策としては)婚活支援、出産・育児に関する情報発信を行うことが重要である。特に、若い人が自らライフプランを考えることができるよう、きちんとした教育を行い、知識を身につけることが必要である」(内閣府「選択する未来」委員会)。

 もちろん結婚や子育ては本人が決定するもので、誰かから言われてするものではありません。

 今回の厚労省の調査に回答した中学生が、今後結婚や子育てにどのようなイメージを持つのか、家庭における子育てとともに、結婚や子育ての意味を考える学校でのライフデザイン教育も重要な課題だと思われます。