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青少年事情と教育を考える 267
こども家庭庁、発足から1年

ナビゲーター:中田 孝誠

 こども家庭庁の発足から1年が経過しました。
 この1年、こども家庭庁は「こどもまんなか社会」をキーワードにいくつかの政策、方針を打ち出してきました。

 例えば、子供政策の基本的な方針を定めた「こども大綱」(昨年12月に閣議決定)の中で、全ての子供・若者が身体的・精神的・社会的に幸福な生活を送ることができる社会を「こどもまんなか社会」と名付けています。

 そして、そうした社会の実現に向けて、日本国憲法や子供の権利条約の精神にのっとって、子供・若者の権利を保障することや、子供や若者、そして子育て当事者の視点を尊重して意見を聞き、対話しながら施策を進めていく、と述べられています。

 こうした理念のもと、幼児期までの子供の育ちを切れ目なく支援するという「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン(はじめの100か月の育ちビジョン)」や「こどもの居場所づくりに関する指針」を打ち出しました。

 また、子供や若者の意見を聞いて政策に反映するという方針や、地域の個人や団体、企業などを「こどもまんなか応援サポーター」と位置付けて活動を紹介するといった情報発信も行っています。

 この他、都道府県や市町村のレベルでこども計画を策定することが求められています。
 子供を大切にする社会へ向かおうとする方向性が示されてきたこと自体は、評価されるべきことと思います。また、子供や若者が社会的な意識を持ち、その意見が聞かれるということも大切なことです。

 一方で気になることがあります。
 上記の施策や方針には、保護者・養育者を支援・応援することや、子供の育ちを支えるための環境や社会の厚みを増すといったことが書かれているものの、子供の育ちを支える最も基本となるはずの“家族”“家庭”への直接の言及があまりありません。そのせいか「こどもまんなか社会」実現の過程がいまひとつ明確ではない印象を受けます。

 ところで、「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」には次のように書かれています。

 「家族が、社会の基礎的な集団として、並びに家族のすべての構成員、特に、児童の成長及び福祉のための自然な環境として、社会においてその責任を十分に引き受けることができるよう必要な保護及び援助を与えられるべきであることを確信し、児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、…」(前文)。

 ちなみに5月は、こども家庭庁が定めた「春のこどもまんなか月間」でしたが、「すべてのこどもが家庭や地域において、豊かな愛情に包まれながら、夢と希望をもって未来の担い手として、個性豊かに、たくましく育っていけるような環境・社会をつくっていく」と述べられています(同庁ウェブサイト)。

 また、11月にはこども家庭庁による「家族の日」「家族の週間」が定められています。
 発足して1年ですから、こども家庭庁の施策を評価するのは早いかもしれませんが、今後どのような方針で施策が進むのか、期待したいところです。