2024.05.01 17:00
共産主義の新しいカタチ 10
現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)
「一夫一婦制」を破壊するフェミニズムの先駆
シャルル・フーリエ①
「フェミニズム」という用語を初めて用いたのは、前回のマルキ・ド・サドと同時代のシャルル・フーリエ(1772〜1837)であると言われます。「科学的社会主義」を標榜したマルクスとエンゲルスは、フーリエの社会主義と実験的なコミューン(共同体)を、サン=シモンと同じ「空想的社会主義」と呼び、これを批判しました。
「情念引力」が人間行動を支配と考える
ところが実際には、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』が、米国の人類学者L・H・モーガンの『古代社会』に多くを負っているのと同等に、フーリエからも多大な影響を受けています。
例えば、『家族・私有財産・国家の起源』でエンゲルスは、フーリエの「一夫一婦制と土地所有は文明の主要特徴であり、文明は富者の貧者に仕掛ける戦争」という見立てを絶賛しています。空想的社会主義者のうちで最も過激でラディカルと言えるのが、フーリエの思想なのです。
商人出身のフーリエは、万有引力が自然界を支配するように、「情念引力(法則)」が人間行動を支配していると考えました。12種類ある情念は文明社会では抑圧されており、その抑圧から解放され情念が満たされることが幸福と見なしました。そして情念が満たされ、最大の幸福を得られた時に、生産力が飛躍的に上昇すると説きました。
フーリエは、それを実現する「理想の社会」として「ファランジュ」と呼ばれる「生活共同体」(アソシアシオン)を提唱しました。400〜2000人(1620人が理想とされた)の住民で構成されるこのファランジュは、一人1ヘクタールの農地を持ち、「ファランステール」なる共同宿舎で生活するという「生産と消費の自給自足の共同体」だと言えます。
またこのファランジュには、「情念の解放」のために「情念取引所」なるものを設けることで、労働や教育のみならず、「結婚」という性的制約を取り払い、「女性解放」「快楽充足」を保証すべきだとする事実上の「性解放社会」を主張しました。いわばエンゲルス以上に「文化共産主義の先駆」と言えるのです。
子供=騒音を発する厄介な存在と見なす
さて、下図はフランスの構造主義哲学者ロラン・バルトの『サド、フーリエ、ロヨラ』において紹介した共同宿舎「ファランステール」の模式図です。図の左の部分、庭と耕作地にはさまれた「騒音:工房・鍛冶場・子供」という記載がありますが、これは唯物論的世界観を表明した証左、と呼べるでしょう。なぜなら、「情念引力理論による快楽至上主義の生活」からすれば、子供は「親や社会が愛情を傾けて育てるべき存在」ではなく、「堪え難い騒音を発する厄介な存在」と捉えられているからです。
フーリエは、育児の仕事を、「親から社会へ」と「アウトソーシング」(外注)するものと考えました。前々回のジャン=ジャック・ルソーも、5人の子供たちを「騒がしく執筆活動ができない」と次々と孤児院に送るなど「育児の社会化」を自ら「実践」して恥じなかった人物なのです。
構造主義者ロラン・バルトは、フーリエとマルクスに関しこう述べます。
「〈政治的なもの〉と〈家庭的なもの〉(これはフーリエの体系の名である)、科学とユートピア、マルクス主義とフーリエ主義、これは目の合わない2枚の網のようなものである。一方の側ではフーリエは全科学をするりと通り抜けさせ、マルクスがこれを採り上げ、発展させる。政治的観点からすれば(そしてとりわけ、マルクス主義がもはや消しえない一個の名を、彼に欠落したものに与えるすべを知ってからは)、フーリエは全くわき道にそれた、つまり非現実的で非道徳的な存在になった。しかしこれと向き合って、もう一つの網が快楽をするりと通り抜けさせ、フーリエがこれを採り上げるのである」(『サド、フーリエ、ロヨラ』)
こう見ると、バルトはマルクス主義の限界を「補完」する思想としてフーリエ思想を見立てたと言えます。(続く)
★「思想新聞」2024年3月15日号より★
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