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コラム・週刊Blessed Life 312
イスラエル・イラン戦争はあるのか

新海 一朗

 4月1314日、イランがイスラエルに報復しました。
 米英などの協力で、イスラエルの被害は何とか最小限に抑えられましたが、300以上ものミサイルや無人機を使った激しいものでした。

 イスラエルの反撃は限定的だったとされますが、破壊工作や代理勢力による戦闘という「影の戦争」を続けてきたイラン・イスラエルの両国が今回、互いの領土を直接の標的にしました。

 中東の混迷は深まる一方であり、いつどうなるか分からない状況です。

 4月19日、イスラエルがイランに反撃しました。
 昨年107日以降のパレスチナ自治区ガザを巡る紛争が、中東地域の大国間の衝突に発展する懸念が一段と高まる事態は、イスラエル・ハマス戦争がイスラエル・イラン戦争へと発展する可能性を秘めているといえます。

 簡単にそうはならないとはいえ、イラン・イスラエルの両国が直接ぶつかり合う戦争は最も警戒しなければならない事態であり、第3次世界大戦の引き金を引く戦争になりかねないと憂慮されているのです。

 ワシントン・ポスト紙は、イスラエルによるイランへの反撃について、「イラン領土内に攻撃できる能力を示す狙いがあった」というイスラエル当局者の話を伝えました。

 イスラエルのネタニヤフ政権には対外強硬派が顔をそろえ、連立に加わる極右政党からは、「イランを粉砕するような反撃」(ベングビール国家治安相)を行うべきだとの声も上がっていました。

 ネタニヤフ首相は、パレスチナ自治区ガザでイスラム原理主義組織ハマス掃討を半年以上続けていますが、組織は壊滅できず、連行された人質も救出できていません。

 イランへの反撃は、厳しさを増す国内世論を考慮した可能性もありますが、米メディアなどは「限定的」だったとの見方を示しており、イスラエルは一定程度、欧米からの自制要求を受け入れているものと考えられます。

 イスラエルはイランの核施設を避けたとみられますが、イラン側は現時点でイスラエルへの即座の再報復を否定しています。双方も本格的な衝突は望んでいないのでしょう。

 しかし、これまで回避していた直接の領土攻撃という一線を互いに越えて、今後、事態がどのように展開するかは見通せません。

 イランとイスラエルの衝突激化で特に不安視されるのは「核」の問題です。

 イスラエルは事実上の核兵器保有国であり、イラン革命防衛隊の司令官の一人は18日、「イスラエルの全核施設に関する情報を得ている」とし、イラン国内の核施設が攻撃されたら、イスラエルの核施設が「最新兵器の攻撃対象になる」と述べました。
 イランが今後、抑止力として核兵器開発を加速させるとの分析もあります。

 このような危機的ともいえる衝突直前の状況がみられる一方、そうそう簡単にはイラン・イスラエルの全面戦争は起こり得ないという観測もあります。
 その理由として、イスラエルのハイテク兵器の完備と核武装国の威力の前に、イランが容易に全面戦争を仕掛けるはずがないとみられるからです。

 ただし、イランからの攻撃に対するイスラエルの防衛費用は決して安くはないということです。
 イスラエル政府関係者は詳細を明らかにしていませんが、今回、イランが攻撃にかけた費用が最大1億ドル(約154億円)であるのに対し、それを撃退したイスラエルとその同盟国(米英)は約10億ドル(約1540億円)を要したと専門家は試算しています。

 イスラエル軍の防空システム計画の責任者であるドロン・ガビッシュ准将は、イスラエルはイランからの攻撃に備えて、備蓄の再構築に余念がないと語りますが、防衛負担が重くのしかかっていることも事実です。