2024.04.24 17:00
天一国主人に育む「神様コーチング」16
カール・ロジャーズから学ぶ「積極的傾聴」
ナビゲーター:阿部 美樹
「来談者中心療法」とは?
「傾聴」の語源は、米国の臨床心理学者でカウンセリングの基礎を築いたカール・ロジャーズ(1902~1987)が提唱した「Active Listening(積極的傾聴)」です。
彼は、従来のカウンセリング理論に疑問を感じ、研究の末、「非指示的カウンセリング」を提唱し、後に「来談者中心療法」と称されるようになりました。
「来談者中心療法」は、「精神分析療法」や「行動療法」に並ぶ三大心理療法の一つです。
カール・ロジャーズは、心理相談の対象者を「患者」ではなく「来談者(クライアント)」と称した最初の人でもあります。
彼が大切にしていることの一つに、「人間には成長に向かっていくための資源や回復するための能力が潜在的に備わっており、その人がどのようにしたいのか、どう在りたいのか、というのはその人自身が一番知っている」という考えがあります。
彼は、その考え方を前提に、相談を受けるときは、自分(聴き手)が持っている専門的な知識や意見を伝えるよりも、相談者(話し手)の主体性を尊重し、その人が自ら建設的な選択ができるようサポートすることに重きを置くようになりました。
そして、自らがカウンセリングを行った多くの事例を分析し、カウンセリングが有効だった事例に共通していた聴く側の三要素を見いだしました。
それが「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」です。
これを一言で表現すれば、「人間尊重の態度に基づくカウンセリング」です。
「受動的傾聴」から「能動的(積極的)傾聴」へ
聴く側の三要素について説明します。
第一の「共感的理解」とは、「相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること」です。
聴き手の経験や価値観を交えず、まるで相手の世界に入り込んだかのように、話し手が見て、感じているものを、相手の気持ちに寄り添って聴く姿勢です。
第二の「無条件の肯定的関心」とは、コミュニケーションの中で「主観的な評価をせず受け入れる姿勢を貫くこと」です。
存在や意見を尊重してもらうことで、話し手も安心してリラックスして話をすることができます。
相手のありのままを受け入れ、相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴きます。
相手の話を否定せず、なぜそのようになったのか、その背景に何があるかを肯定的な関心を持って聴きます。
第三の「自己一致」とは、「聴き手が感じていることと相手に対する言葉や態度が一致していること」であり、「聴き手が誠実かつありのままの状態であること」です。
聴き手が理想の自己と現実の自己を一致させることができなければ、心理的に不安定になります。
そのような状態では、自分の感情に素直になれず相手の話にも純粋に聴けなくなります。
相手がありのままの自分を表現できたり、心を開かせたりするためには、まず聴き手が自己一致することが必要です。
例えば、話しが分かりにくいときはそのままにせず、分かりにくいことを伝えて真意を確認するなど、常に自己一致を心がけることが大切です。
カール・ロジャーズが提唱する「Active Listening」とは、日本語で表現すれば「積極的傾聴」であり「能動的傾聴」です。
話し手の伝える言葉や情報をそのまま漠然と受け止める受動的な姿勢ではなく、上記の「三つの要素」を心がけながら能動的に聴くことです。
そして、傾聴を通して安心して話せる雰囲気をつくり、話し手の体験がまるで自分の体験かのように感じて聴いてみましょう。
そうすれば、話し手も傾聴されながら深い気付きを得たり、新しい発見があったり、前向きに取り組もうとする勇気を得たりすることでしょう。
【参考文献】
立命館大学人間科学研究所ウェブサイト
人間科学のフロント「カール・ロジャーズに学ぶ『聴く姿勢』」
【関連情報】