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シリーズ・「宗教」を読み解く 314
修道院の祈り⑫
愛博士、聖ベルナルドゥス

ナビゲーター:石丸 志信

 12世紀になって、それまでの修道院の刷新と改革の歩みが一人の宗教的天才を生み出す。
 無名の信仰者によるたゆまぬ精誠の蓄積が、聖人といわれる一人の人物に結実した。

 1112年の春に、ベルナルドゥスという名の青年が、兄弟、親族、友人ら30人を引き連れてシトー修道院の門をくぐった。

 彼はシトー会に受け入れられて間もなく、クレルヴォーの森に派遣され、そこに新しく修道院を建て、修道院長としての生活を始めた。以後40年間、修道院長として、12世紀のキリスト教会をけん引することになる。

 聖ベルナルドゥスは、祈りと活動、完全な神への愛と兄弟への愛を深く一致させた生活を行った聖人であり、「観想と活動を調和させた模範である」といわれる。
 『戒律』を順守して労働と祈りの簡素な生活の中で、ひたすらキリストの愛を体験する深い観想を旨とし、「愛博士」と呼ばれるようになる。

 一方、修道院の中に引きこもることなく、教会内外に湧き起こる諸問題にも積極的に関与していく。

 キリスト教会内の分裂の危機を収拾し、教会指導者と皇帝との調停にも乗り出している。
 弟子の一人が教皇の座に就きエウゲニウス三世となると、彼は師としてこの教皇を導いた。

 聖ベルナルドゥスは、神の愛を受けて神を愛することを知り、神を愛することは救い主なるイエス・キリストを慕うことだと教える。
 キリストのように考え、キリストのように行う。イエス・キリストとの深き交わりの中で愛の実践をなす生き方を示した。

 キリストの十字架の傍らにひざまずいて祈り、十字架にはりつけにされたキリストの苦しみを共に味わう黙想の時を持つ生活。

 命の糧としての聖書を読み深め、霊的感覚を研ぎ澄まして、神のみ言に潜んでいるイエス・キリストの姿を見いだしていく生活。

 それを通して花嫁が花婿を慕うように神を慕う、中世修道霊性の道を開いていった。



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