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心をのばす子育て 35

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

5、知の教育

①心の知的教育

■人間性を育てる人生観

 昔の家庭には生活の中に「人生」がありました。誕生から結婚、老後、死、これら全部を家庭の中で学ぶことができました。学校でわざわざ学ばなくても家庭にありました。
 現代は出産と死が病院になりました。兄弟がいなくなりましたから、お姉さん、お兄さんを見ながら学ぶということができなくなりました。結婚も家事も子育ても全部初めてなのです。すべてが初体験の人生を行くので不安なのです。

 さらに、昔は価値観がしっかりしていました。その価値観の内容が正しかったかどうかは別として、確立していたことは確かです。昔の価値観で足らなかったのは「世界観」です。ですから日本人は海外に戦争に行って残虐なことをしたのです。
 もし日本にしっかりとした世界観があったら、あの戦争は変わっていたことでしょう。それに対し現代は価値の多様化の時代と言いますが、実は「価値の喪失の時代」です。そのために混乱し、どうしたらよいかの方向性が見えないのです。
 そして唯一残った「人に迷惑をかけない」だけで躾(しつ)けをしています。つまり自分の行動を人の判断にゆだねているのです。その結果、人の目を気にして生きる生き方になってしまいます。信念をもって生きるという力強い人間にはなりません。

 しっかりとした「人生観・価値観」を、親自身がまず学ばなければいけません。そして、それを子供に教えなければなりません。

 教えるべき人生観の内容は年齢に応じて高くなっていきますが、善悪観、権利と義務、性について、死について、ボランティア精神、社会性、国際性……といった内容があります。「個人の人生、家庭、社会、世界、過去から未来」といった幅広い人生観が必要です。

●善悪観
 人間教育のスタートに善悪観があります。
 聖書の中に、モーセが神から与えられた最古の教えとしての「十戒」がありますが、読んで字のごとく「戒め」という善悪観です。やって良いことと悪いこと、何が正しくて何が間違っているかという基本的な善と悪の問題を教えておかないといけません。
 昔、お釈迦(しゃか)様が弟子に語られた話があります。お釈迦様が弟子に「悪いということを知って犯す罪と、悪いということを知らないで犯す罪がある。どちらの罪が大きい罪になるか」と質問されました。
 そして、お釈迦様が答えとして語られたのは「ここに熱くなっている鉄の火箸(ひばし)がある。この火箸が熱いということを知っている人と、知らない人がいる。どちらの人の火傷が大きいと思うか」と問われました。
 それは、当然知らない人でしょう。知らない人は平気で握りますから大きな火傷をします。知っている人は熱いだろうと思って触るので、せいぜい指先がちょっと火傷するくらいです。

 ですから、悪いということを知っていて犯す罪と知らないで犯す罪は、知らないで犯すほうが大きいのです。
 罪は犯した結果で決まります。その人が悪いと知っているか、知らないかでは決まりません。人を殺して、「私は悪いとは知りませんでした」では済みません。知らないがゆえにとんでもないことをしてしまうのです。知っている人は罪悪感が起こり、それがブレーキになります。だから犯したとしても小さい罪で終わるのです。
 罪悪感はどちらが大きいかといえば、知っている人です。子供の中に善悪感があれば、悪いことをしたとしても小さいところで終わるはずなのです。

 結論として、お釈迦様は弟子に「無知が最大の罪である」と言われたのです。この善悪観を教えておかないと、子供はとんでもないことをやってしまって、後で警察につかまって大騒動ということにもなりかねません。その時になって悟っても遅いのです。

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 次回は、「頭の知的教育」をお届けします。