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心をのばす子育て 34

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

5、知の教育

①心の知的教育

■反発されない言い方

アイ(私)・メッセージ
 親にとって子供を躾(しつ)けたいことは山ほどあります。その時に注意しなければならないのは、問題の言動をしている子供は「やる気」を失っていることが多いということです。
 やる気とはあくまで自分の中から出てくる自発性の一つです。自発性というのは言動の動機が自分にあるということですから、人の指示と命令で動かされているとやる気を失ってしまうのです。

 ただ、親として「指示と命令」は必要なものです。指示と命令が悪いわけではありません。問題はその量なのです。
 「指示と命令が過剰になったとき」と「全く指示も命令もしないで子供の判断に任せたとき」に子供はおかしくなります。
 指示と命令が過剰になるとやる気を失い、しないと自己中心な、楽なことしかしない人間になります。
 子供の判断に任せていいのは、一人前の人格を身につけてからです。基本的な躾け・訓練をする前から子供の判断に任せてはいけません。

 やる気を失いかけている子供と話す場合は、指示と命令を極力押さえなければなりません。
 では、どうするかというと「アイ・メッセージ」で親の気持ちを伝えるのです。「お母さんはこう思う」という言い方です。

 例えば小学校くらいで、部屋の中が汚くなっているとします。親としては「部屋の掃除をしなさい」と言いたくなります。しかし、それでは命令になります。
 その結果、子供の主体性が消えて、やる気がなくなり不平と不満がつのります。そのうえ子供は部屋をきれいにせず、親が片づけるようにでもなれば、今度は逆に親のほうに不満が蓄積します。

 では、どうしたらいいかというと、親の気持ちを伝えるのです。例えば「部屋が汚いと、お母さん、友達が来たとき恥ずかしいわ。だからきれいにしてほしいの」という言い方です。
 この私メッセージは「子供の言動」「それに対する親の感情」「その理由」という三つの要素からなっています。ただしこれは指示・命令ではありませんから、子供が従うかどうかは分かりません。それは子供の問題です。
 そして、子供が親の気持ちを知って、自分の意志で部屋をきれいにしたら、それは子供の思いやりです。

 「アイ・メッセージ」に対し、「あなた」が主語になると、たいてい相手を批判するようになります。
 「あなたはいつもだらしない」「あなたはグズなんだから」とか、「あなたは整理整頓(せいとん)しない」という言い方になります。これでは子供との対立を深めるだけです。

●アイ・メッセージの注意
 「アイ・メッセージ」は親の嫌な気持ちだけでなく、うれしい気持ちを伝えると効果的です。
 例えば、兄弟は仲良くしてほしいものです。それで、兄弟げんかをしているとき「ケンカをやめなさい」と言っては指示と命令になってしまい、あまり効果はありません。
 それよりも、兄弟が仲良くしているときに「あなたたちが仲良くしていてくれると、お母さん、うれしいわ」と言うのです。そうすると子供は「仲良くしたらお母さん、うれしいんだな」と思って仲良くしようと考えるようになります。

 親が何に喜んでいるかということは意外に言わないものです。「仲良くしなさい」と命令して仲良くしているのでは命令に従っただけです。
 本当に心から仲良くするというのは、相手の気持ちやお母さんの気持ちを悟って子供が主体的にやることなのです。

 もう一つの注意は、「アイ・メッセージ」を使いすぎないことです。
 この言い方は相手に判断をゆだねる方法なので、使いすぎると相手に負担を与えすぎる場合があり、逆に子供はいらついたりします。また、何もしない場合もあります。
 時には、はっきりと指示を与えることも大切です。

 問題はバランスです。「何も言わないで子供に任せる時」、「アイ・メッセージで親の気持ちを伝える時」、「指示と命令で親の意見をはっきりさせる時」、このバランスです。

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 次回は、「人間性を育てる人生観」をお届けします。