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青少年事情と教育を考える 263
「教員の修士化」で質の向上

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、学校制度の新しい流れとして「義務教育学校」が広がりつつあることを紹介しました。
 今回は、学校教育を担う教員の「修士化」を取り上げたいと思います。

 現在の学校教育における最大の課題の一つは教員の働き方改革です。
 一方で、教員採用試験の倍率が軒並み低下していることもあり、教員の資質、教育力が低下しているのではないかともいわれています。

 教員の資質が低下しているのかどうか。
 この点は賛否両方の見方がありますが、例えば最近の教員の年齢構成は50〜60歳前後のベテランと若手が多く、中堅世代が少ないことから、ベテランの経験が若手にきちんと伝わらないのではないかという懸念が以前から指摘されています。

 長時間労働や資質について議論される中で、最近改めていわれているのが、教員の修士レベル化です。(「教育新聞」2月22日号他)

 ICT教育をはじめ学校現場の課題が多様化し、高度化する中で、学部4年間だけでなく大学院修士課程で学ぶことで、教職を高度専門職とし、質を高めていこうというわけです。

 修士化の案自体は以前からいわれてきたもので、中央教育審議会が2012年に提言しています。

 この時は、2008年から設置されている教職大学院を全国に拡大し、そこで教育を受けた教員に「一般免許状」という免許を与えようという案でした。

 ちなみに、教職大学院は「子供たちの学ぶ意欲の低下や社会意識・自立心の低下、社会性の不足、いじめや不登校などの深刻な状況など学校教育の抱える課題の複雑・多様化する中で、こうした変化や諸課題に対応しうる高度な専門性と豊かな人間性・社会性を備えた力量ある教員が求められてきています。このため、教員養成教育の改善・充実を図るべく、高度専門職業人養成としての教員養成に特化した専門職大学院としての枠組み」と位置付けられています(文部科学省ウェブサイトより)。

 教職大学院自体は現役の教員が学ぶ形になっていますので、より実践を意識したカリキュラムになっています。

 教員養成の案としては、以前も本欄で取り上げましたが、国家資格化があります。
 自民党の教育再生実行本部が2015年に提言しました。

 国家資格にする目的は、教員の社会的価値を高め、それによって教員の質を向上させようというものです。ただ、今のところは具体的な動きにはなっていないようです。

 海外ではフィンランドのように大学院の修士課程まで進まなければ教員になれないという国もあります。それによって教員の専門性と社会的な地位を高めるわけです。

 もちろん、教員は実際に学校現場に立って経験をすることが大切、といった意見もあります。
 それでも子供の教育を担う高度専門職である教員の社会的価値や質を高めるためにどうするかは、今後の日本を考える意味でも、大変重要なテーマです。