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青少年事情と教育を考える 262
増える「義務教育学校」

ナビゲーター:中田 孝誠

 先月の本欄で、コミュニティ・スクール制度(学校運営協議会を設置)を導入した学校が公立学校全体の半数を超えたことを紹介しました。

 学校運営協議会は、教育委員会が任命した委員が学校運営と必要な支援について協議するものです。昨年11月の発表で1万8135校になっています。

 もう一つ、今回は学校制度の新しい形として広がりつつある「義務教育学校」を取り上げます。

 義務教育学校は、小学校と中学校の9年間の教育を一貫して行います。
 2016年に22校が設置され、次第に拡大しています。

 昨年5月の時点で国公私立合わせて207校で、前年より29校増えました。また、在籍する児童生徒は7万6千人余りで、8千200人増えています。

 もちろん、全国の小中学校は合わせて約2万9千校ですから、割合から見れば小さいですが、5年前が82校ですから、2倍以上増えたことになります。

 背景には、少子化による学校の統廃合の影響もあるようです。教育環境を確保するため、自治体が義務教育学校を設置するというわけです。

 小中の教育を一貫して行う学校は以前からありました。
 従来の小中一貫校と義務教育学校との違いは、小中一貫校が小学校と中学校おのおのに校長がいて、教職員組織も別になっているのに対して、義務教育学校は小中学校で一人の校長、教職員組織も一つになっていて、いわば「一つの学校」になっている点です。また、小学校6年間・中学校3年間ではなく、前期課程6年間・後期課程3年間になっています。

 義務教育学校のメリットとして、次のようなことが挙げられています。

 例えば、学年を必ずしも6・3制で区切ることなく、新しい教科の創設や指導内容の入れ替えなど柔軟な教育活動の工夫が可能です。

 また、「中1ギャップ」への対応があるといわれています。
 中学校に入学すると、学習レベルが上がることなどもあり、不登校、いじめ件数などが増える傾向にあるからです。

 さらに、学校が社会性育成の場となるという指摘もあります。
 小中学生が共に学び交流する場をつくることで、思いやりや助け合いの精神を育みたいということでしょう。

 教員同士で情報を共有しやすくなり、指導も継続してできるということも挙げられています。
 児童生徒の心身のサポートも一人の教員だけでなく複数でできるようになります。

 一方、心配されているのは、例えば学校行事などで自主性やリーダーシップを養うことを考えると、小学校上級生も義務教育学校では中学年になり、リーダーとして活躍する機会が減ってしまうということです。

 また、学校施設の利用スケジュールの調整、人間関係が固定化すること、転校する児童生徒への対応などの課題も挙げられています。

 学校は、子供と保護者、そして地域社会に大きな影響があります。
 広い目で見れば、義務教育学校は少子化時代の学校や教育が今後どのような方向を目指すのか、それを考えさせられる動きともいえそうです。