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コラム・週刊Blessed Life 310
日米比3カ国首脳会談が開催される

新海 一朗

 岸田文雄首相、バイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領の三首脳は、411日(日本時間12日)、ホワイトハウスで初の3カ国首脳会談を開催し、自衛隊と米比両軍との海上共同訓練の拡充などで合意しました。

 このような会談が開催された背景には、中国の南シナ海、東シナ海への侵出と太平洋へ向かう海洋覇権の野望が露骨になってきているという理由があります。

 フィリピンと中国が領有権を争う南シナ海のアユンギン礁近くで、中国海警局の船がフィリピン船に衝突し、放水銃を発射するなど危険行為が相次ぐ状況を受けて、今回の3カ国首脳会談では、海洋安全保障が最重要議題となったのです。

 バイデン大統領は、東・南シナ海で威圧的行動を強める中国への懸念を念頭に、日本、フィリピンとの「海洋・安全保障の関係深化」に積極的に関わる意向を表明し、「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない。南シナ海でフィリピンの航空機や船舶、部隊が攻撃を受ければ、相互防衛条約が発動される」と強調しました。

 その言葉に応えるかのように、岸田首相は「世界が複合的な危機に直面する中、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序の維持強化に向け、同志国、同盟国との重層的な取り組みが重要だ」と述べました。

 バイデン大統領は会談に先立ち、念を押すように、「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない」と明言しました。

 当然ながら、中国の反応は厳しいものです。米国による中国包囲網の戦略は見え見えであり、見透かされている故、早速、中国政府は11日、米国と日本が首脳会談の中で中国を非難したことに対し、中国外務省の毛寧報道官は、日米は台湾やその他の海洋問題で中国を「中傷し、攻撃した。中国の内政に大きく干渉し、国際関係の常識を大きく逸脱した」とけん制しました。

 また、中国としては「強い不満と断固とした反対」を表明し、関係国に厳正な申し入れを行ったとしながら、日米関係により、他国の利益が阻害されたり、地域の平和と安定が損なわれたりすることがあってはならないと続けました。

 毛氏は台湾問題について、「中国の内政であり、外部勢力の干渉は容認しない。台湾への侵略の歴史を持つ日本は、特に言行を慎むべきだ」と強調、沖縄県・尖閣諸島や南シナ海に対する中国の領有権も改めて主張し、共同声明に抗議を申し入れたとくぎを刺しました。

 中国の拒絶反応は予想どおりのものですが、日米比に、オーストラリアを加えた4カ国は、すでに47日に南シナ海で共同訓練を実施しています。
 今後、海上自衛隊と米比海軍に他のパートナーも加えた共同訓練・演習を推進していくことが確定しています。

 岸田首相が、連邦議会の上下両院合同会議で演説し、自由と民主主義が世界中で脅威にさらされており、とりわけ、中国の対外的な姿勢や軍事動向は「国際社会全体の平和と安定」に対する前例のない挑戦だと述べたことは、米国での11月の大統領選を経て、共和党のトランプ前大統領が再登板する可能性も指摘される中、安全保障や経済など幅広い分野で協力が進む日米関係の重要性を、共和党・民主党を含む米議会関係者に訴えかける狙いがあったものと受け止められています。