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コラム・週刊Blessed Life 309
一帯一路の理想と現実

新海 一朗

 中国が掲げる「一帯一路構想」とは、習近平氏が2013年に提唱し、現在も推進している、アジア~ヨーロッパ~アフリカ大陸にまたがる巨大経済圏構想を指します。

 中国側の統計によれば、2014年から2022年までに、約7481億ドル(約1047600億円)をこの一帯一路構想に投資してきたことになっていますが、これは中国にいかなるメリットをもたらしているのでしょうか。

 発展途上国家の経済発展を支援するという名目の一帯一路構想は、具体的には、中国の会社を用いて、中国の技術、資材、人員を使用し、いわば、中国版公共事業を海外輸出するというかたちで行われます。

 プロジェクトで使われるお金は人民元であり、人民元が世界の各国で使用されることによって、その影響力を高めようとしています。

 支援を受ける途上国は債務を増やし、中国が一方的に経済的利益を得る政策ですから、巨大な債務を負わされた国々は、債務返済ができなくなってしまいます。

 米国の調査機関ロジウム社の統計では、2020年から20233月末までに、中国が世界各国のインフラ関係へ融資した金額のうち、約785億ドル(約109900億円)の返済が滞っていると見られ、それらの国は、ベラルーシ、レバノン、ガーナ、スリランカ、ザンビア、アルゼンチン、エクアドル、スリナム、ウクライナの9カ国であると報告しています。

 さらに、債務不履行に陥っている国々の総額は、2019年から2021年までで1040億ドル(約145600億円)にも達しているということです。

 債務不履行の国からは、中国はその代償として、さまざまな天然資源やインフラ、利権などを奪っています。

 例えばスリランカでは、中国が建設したハンバントタ港を巡り、債務免除と引き換えに、港の利用権を中国に譲渡する契約を結び、しかもその内容については明らかにせず秘密に付しています。中国サイドに極めて有利な内容になっているのでしょう。

 こういったやり方は、「債務の罠」と呼ばれ、中国は相手国の債務不履行を見越して、債務の罠を仕掛けているのではないかとの批判も出ています。

 中国から受ける融資の特徴は、高金利であること、返済期間が短いことです。
 このことからも容易に分かりますが、途上国の支払い能力を超える条件に設定されているので、債務不履行に陥るのは明らかです。冷酷なやり方といえるでしょう。

 しかし冷静に考えてみると、巨額の資金を途上国に投資して行う「一帯一路事業」は、投資マネーの返済の遅延、債務不履行などが常態化するのであれば、これは中国自身が「不良債権の罠」に陥っているという見方もできます。ただの大金のバラマキで終わり、貸した金が返ってこないということです。

 「一帯一路」は効果的な投融資の政策ではないということです。
 この10年間、中国政府が主導する対外投融資は、必ずしも戦略的に実施されたとはいえないということでしょう。

 実際、中国国内では、そんなに外国に大金を支援(貸付)する余裕があるのなら、国内の人民にもっとお金を使えという叫びが上がっています。

 不動産バブルの崩壊で、青息吐息の中国経済が人民を苦しめているのに、どこにそんな余裕があるのかと糾弾の声が上がるのも無理からぬことです。

 一帯一路の光と影、理想と現実が見えてきます。
 10年(20132023年)の間に、中国経済そのものが変調をきたし、かつてのような高度成長も見込めなくなりました。

 2023年10月に行われた「一帯一路フォーラムサミット」に首脳を送った国は、わずか24カ国にとどまり、2019年に開催された時の38カ国から大幅に数を減らしました。

 「一帯一路」の現実は厳しいものがあると知るべきでしょう。