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ほぼ5分で読める勝共理論 24
疎外論⑩
疎外論に対する批判と代案(4

編集部編

労働者が権力を握れば全てうまくいく?
 疎外論に対する二つ目の批判は、「労働者が権力を握れば全てうまくいく」と考えたことです。
 つまり労働者を神聖化したのです。

 これに対して資本主義社会では、「人間は権力を持つと堕落する生き物である」と考えます。労働者と資本家を分けるということはありません。

 人間には、誰でも良心がありますが、必ず自己中心的な思いもあります。両方あって矛盾しているわけです。
 だからどんなに立派な人であっても、無条件に権力を与えてはいけないと考えるのです。

 しかし誰も権力者にならないというわけにはいきません。そんなことをしたら国が動きません。もっと悪い国になってしまいます。だから権力者が独裁者にならないような制度を作るしかありません。 

 こうしてできたのが三権分立です。
 司法と立法と行政を別々の人が担当して互いに監視するのです。これは人間の本質をよく捉えた、非常に素晴らしい制度だと、いつも感心します。

 ちなみに、共産主義の国には三権分立はありません。
 その制度らしきものは一応あるのですが、司法も行政も立法も全て共産党の指導を受けています。だから事実上、共産党の一党独裁です。
 人間の本質を理論的に捉え間違えると、これだけ大きな問題になるということです。

 また資本主義社会では、資本家と労働者ではどうしても資本家の立場が強くなってしまいます。それで憲法や法律で対等になるようにコントロールしています。

 例えば日本国憲法では、労働者に団結権、団体交渉権、団体行動権を認めています。
 他にも最低賃金を都道府県ごとに決めたりしています。

 マルクスの時代に労働者の立場が非常に厳しかったのは事実なのですが、今はそういう時代ではないということです。

人間の本質は何か
 社会にはさまざまな矛盾があります。しかしその解決のために、労働者を権力者にすればよいというのは決定的な間違いです。

 代案は、権力を抑制し、社会的弱者を国家が保護する制度を作ることです。
 その中でどれだけ人間らしい生き方ができるようになるかは、個々人や社会全体の努力に関わってくるでしょう。

 最後に、なぜこのように間違っている疎外論が多くの人に受け入れられたのかを説明します。

 結論から言うと、疎外論が誰にでもある人間の自己中心性に見事にマッチする理論だったからです。

 人間には誰にでもねたみや嫉妬の思いがあります。
 うまくいっている人を見るとうらやましく思うだけではなく、批判したくなる思いもあります。あるいは楽をしてぜいたくに暮らせないかなという怠けた気持ちもあります。

 疎外論はこの自己中心的な思いを見事に正当化しているわけです。

 そして人は権力を握ると、支配欲や独占欲を強烈に持つようになります。
 疎外論はその思いも見事に正当化してくれます。

 反対する人は全て人類の敵だと言えばいいのです。言ってみれば人間の心の中にある悪魔性を引き出してしまう思想です。
 こうして共産主義はたくさんの犠牲を生みました。その犠牲が今も続いているということです。

 人間の本質とは何か、というのはかなり哲学的なテーマです。なかなかとっつきにくい問題だと思います。ですが、この話が理解できると、社会のニュースや出来事の本質がかなり分かるようになります。それを可能にするのが勝共理論なのです。
 これが二つ目の批判です。

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