心をのばす子育て 31

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

5、知の教育

①心の知的教育

■自己コントロール

●ルールと罰
 子供の責任感を育てるためにルールが必要ですが、ルールがあるということは破った時の「罰」が必要です。
 罰のないルールが守られないことは周知の事実です。これは青少年犯罪を見るとよく分かります。
 暴走族がなかなかなくならない理由の一つに、本人たちに全く罪悪感がないうえ、警察につかまってもすぐ釈放されるので、警察をなめてしまっているのです。

 ただ、罰は必要ですが、過剰なものにならないように注意する必要があります。罰を与える目的は子供を良くすることだからです。
 罰を与えたことで子供が恨みをもったりしてしまったら逆効果です。それが「体罰」のようなものです。体罰は、時には必要だと思う人も、絶対にだめだと思う人もいます。
 ただ、一つはっきりしていることは、親子の情関係、信頼関係ができていない時の体罰は親子関係がこじれるということです。必ず子供の心に傷として残ります。

 子育てにおいて、基本的に暴力に訴えることは好ましくありません。躾(しつ)けに「力」を使うと、その子は将来、物事を力で解決しようとします。大人になって子供が生まれた時、同じように子供に暴力を振るうようになる可能性があるのです。
 ですから躾けに体罰は使わないほうがいいのです。力で解決しようとしないで、言葉で躾けていかないといけません。しかし、時には体を張らなければならない時もあります。親が本気で子供のことを思った結果が体に出るということもあります。
 ですから、体罰を完全に悪と一概に決めつけないで、その動機や背景も考えて判断すべきでしょう。それでも、体罰を使うのは最後の手段として考えるべきです。使わなければそのほうがいいのです。
 問題は形ではなく、子供のことを本気で考えている「親の心」が大切なのです。

〈誤った罰のあり方〉
・親の権威を示すための罰。
・絶対服従を強いるための罰。
・過去のことを持ち出して与える罰。
・親の感情や個人的価値観で与える罰。

 子供に対する罰は、ルールを守る責任感を養うために与えるものです。ですからルールと一緒に最初から決めておくべきです。
 その罰は、子供が自分の行動の結果に対して責任を取るという形で与えられるものです。子供を成長させるために与えるものですから、愛情をもって、できるだけ穏やかに対話の中で与えてください。
 よく躾けと称して与える罰がありますが、これらの多くは誤っている場合が多いです。親に従わせるために与える罰は親のエゴでしかありません。子供との関係においても成長においてもよいことはなにもありません。

●忍耐力(我慢)
 自己コントロールの中でぜひ身につけさせたいのは忍耐力です。忍耐力というと難しく感じますが、要は我慢することです。
 何でも子供の要求するとおりにしていたら、子供はダメになります。この子供をダメにするのは「精神的な要求」ではなく、「物に対する要求」です。
 子供の要求は小さいころは100円、200円ですむものが、大きくなると携帯電話、パソコン、バイクなど何万円にもなってきます。そうすると簡単に買ってあげることができません。その時に我慢することを学んでいないと万引きしたりするのです。

 また、小さい時から何でも簡単に手に入ると感動が薄れてしまいます。ドイツでは子供にプレゼントをあげるのは、クリスマスと誕生日だけなのだそうです。そうすると粗末なものでも子供は大変喜びます。苦労して手に入れたものがうれしいのは大人も同じです。
 このように小さい時から物があふれる生活をしていると心が育っていかないのです。子供には我慢という、少し苦労して手に入れるということを学ばせる必要があります。

---

 次回は、「可愛い子には旅をさせよ」をお届けします。