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facts_3分で社会を読み解く 7
洗脳、マインド・コントロール、ディプログラミング

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 東京地裁で審理されている世界平和統一家庭連合に対する解散命令請求訴訟に、私が提出した意見書の内容紹介の2回目である。
 今回は言葉の定義を確認しておく。

 初めに、「洗脳」と「マインド・コントロール」の違いについて簡単に説明したい。

 人の心を操作する技術という意味で最初に使われた言葉は「洗脳」で、英語では Brainwashingという。
 これはもともと、朝鮮戦争の時代に中国共産党が米軍捕虜を共産主義者に転向させるために施した思想改造を指す言葉だった。

 「洗脳」とは、物理的監禁、拷問、薬物、電気ショックなどを含めた強制的な方法で、人の信念体系を変えさせる手法を指す。
 しかし後の調査で、中国共産党の拘束下にあったアメリカ人は、一時的あるいは表面上の服従を示していただけで、心の底から共産主義者になったわけではなかったことが判明し、実際には人の心を自由に操ることはできないことが分かった。

 一方で「マインド・コントロール」とは、身体的な拘束や拷問、薬物などを用いなくても、日常的な説得技術の積み重ねにより、しかも本人に自分がコントロールされていることを気付かせることなく、強力な影響力を発揮して個人の信念を変革させてしまう、「洗脳」よりもはるかに洗練された手法を指すとされている。

 問題は、洗脳のように強制的な手段を用いても人の信念体系を変えさせるのは困難だとされているのに、日常的なコミュニケーションの積み重ねだけで果たして精神操作が可能なのかということだ。実証的研究によれば、それは不可能である。

 ディプログラミング(Deprogramming)とは、「カルトによって信者に植え付けられた思考プログラムを解除する」という意味で、これを専門的に行う者を「ディプログラマー」という。もし、「カルト信者」が「洗脳されている」のであれば、彼らは「脱洗脳」されなければならないということになる。

 ディプログラミングの創始者といわれているテッド・パトリックは、カリフォルニアの公務員だったが、彼の息子が「神の子供たち」という論争のある宗教団体に出合って入会してしまった。

 そこで彼は「脱洗脳」の技術を編み出したのだが、それは新宗教運動の成人したメンバーを路上で拉致し、彼らをモーテルなどに監禁し、彼らの所属する団体に対する否定的な情報を浴びせ続け、彼らが降参して信仰を棄(す)てるまで責め立てるというものであった。
 こうして彼は最初の職業的なディプログラマーとなった。

【関連情報
「洗脳」「マインド・コントロール」の虚構を暴く

解散命令請求訴訟に提出した意見書02

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