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ほぼ5分で読める勝共理論 20
疎外論⑥
「疎外論」は何を言っているのか

編集部編

四つの疎外
 マルクスは、資本主義社会には四つの疎外がある、そしてそれを自分が初めて明らかにした、と言いました。

 四つの疎外のうちの一つ目は、「労働者からの労働生産物の疎外」です。

 労働生産物とは労働者がつくった物のことです。資本主義社会では、労働者がせっかくつくった物が資本家に横取りされてしまう。そしてそれがまた新しい資本になる。その資本でまた新しい会社がつくられて、労働者が生まれる。

 こうして社会がどんどん悪くなっていくというわけです。

 二つ目は、「労働者からの労働の疎外」です。

 マルクスは、労働はつまらないものではなく、本来は喜びなんだ、と言いました。もともとヨーロッパでは、労働は奴隷がするものだ、という考えがあるからです。

 日本では昔から職人を大切にする文化がありましたから、労働を尊く思う傾向があります。その点は、ヨーロッパと日本は少し違いますね。

 その意味では、マルクスの考えも間違ってはいないと思います。
 ただ、その労働が賃金を得るためだと苦痛でしかない、本来の喜びがなくなってしまうんだ、と言いました。これはちょっと言い過ぎですね。

 そして三つ目は、「人間からの類の疎外」です。

 これは、一つ目と二つ目の疎外によって、労働者の人間らしさが奪われてしまっている、人間の本質を失っているんだ、というものです。

 最後は、「人間からの疎外」です。

 労働者は、本来は自分がつくった物を他人に与えて、その喜んでいる姿を見て幸せを感じるはずだ。ところが資本主義社会では、労働者は商品を高く売りたいと思うし、消費者は安く買いたいと思う。だから対立関係になる。

 この対立が「人間からの疎外」だというわけです。

 以上が疎外論の内容です。
 この内容は細かく理解できなくても構いません。おそらく共産主義者の人もほとんど知らないと思います。

 ただ結論としては、資本主義社会では労働者が働けば働くほど悪い社会になる。真面目に頑張るほど自分の首を絞めることになるんだ、と言っているということなのです。

資本は吸血鬼?
 「疎外」の一番の原因は何でしょう。

 マルクスは「資本家だ、あいつらが悪い」とは言いませんでした。
 では何が諸悪の根源かというと、「資本だ」と言いました。
 人間ではなく、自由に使えるお金が悪いと言ったのです。
 難しい言い方をすると、「私有財産」です。これが悪だというわけです。

 資本があるから会社がつくられる。そして労働者が無理に働かされる。働いた結果、また資本が増える。そしてその資本でまた新しい労働者が生まれる。

 マルクスはこのことを、「資本は吸血鬼のようだ」と言いました。労働者の生き血を吸いながら、どんどん成長していくんだというわけです。

 ですから、「社会を良くするには資本がない社会にするしかない。ちょっと変えるぐらいじゃだめだ。根本的に変えないといけない」。つまり「共産主義の国にするしかない」というわけです。
 これが人間疎外論の結論です。

 確かに、なるほどなあと思える部分もありますが、でも結論は全くの誤りです。ではどこが問題なのでしょうか。
 勝共理論はそのことを明確に指摘しています。

 次回は、この点について、疎外論はどこが間違っているのか、についてお伝えいたします。

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