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スマホで立ち読み Vol.30
子どもの心をひらく 5

村上小夜子・著

(光言社・刊『子どもの心をひらく』〈20161030日初版発行〉より)

 スマホで立ち読み第30弾、『子どもの心をひらく』を毎週月曜日(予定)にお届けします。
 長年、幼児教育に携わってきた村上小夜子・光の子園副園長が、その経験から得た内容を紹介しています。「ねばならない」「こうあるべき」という教育から、子供が本来持っている神性を引き出す教育へと転換する方法をお伝えします!

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1章 したいことをさせる

子どもの問題行動は愛情を求めるサイン

 次に、意志がはっきりしていて、自分の好きなことしかしない男の子のケースを紹介します。午前中に10分から20分ほど、礼拝や音楽、絵画などをするのですが、彼はその日の気分で、やったりやらなかったりでした。「体操ですよ」と保育士が言うと、「まだ遊んでいたい」と答えるので、遊びの時間を少し延長したりしました。

 9月の運動会では、組立体操をします。練習の時、その男の子はいつまでも練習に参加せずに、絵本を読んでいました。保育士も、運動会の日が迫っているため、何とかしなければと焦りました。ただ「練習しましょう」とか「頑張ろうよ」だけの通り一遍の言葉掛けでは、練習しようとしませんでした。

 しかし、してほしいことを頭ごなしに押し付けても、意味がありません。そこで3人の保育士は、クラスの子どもたちと一緒になって、彼に聞いてみることにしました。「あなたは組立体操をしないけど、他にしたくないことは何?」。

 自分にスポットライトが当たって気分を良くしたのか、それまで部屋の後ろのほうで絵本を読んでいたのに、急に前へ出てきて、「朝の会、絵画、文字のおけいこ、お帰りの会……」と、次々に挙げました。ほとんどが大事な設定保育(学校で言う教科科目と同じ)ばかりでした。あ然としましたが、「待て、待て」と、自分の心を落ち着かせながら、「そうなの」と丁寧に聞いて、黒板に一つ一つ書き出しました。

 次に、好きなことを聞くと、「遊び!」と大きな声で答えました。「それじゃあ、光の子園に来たら遊んでばかりいるの?」と聞くと、「ウン」と言うのです。

 これは困ったと思い、組立体操のために並んでいた子どもたちに問い掛けました。「○○くんは、光の子園に来たら遊びしかしないそうです。皆さんはどう思いますか?」と聞くと、子どもたちは「だめー」と即座に答えました。「どうして?」と聞くと、「大きくなれないから」。

 「そうですね、食べ物を食べると体は大きくなりますが、自分のしたいことばかりして、お父さん、お母さん、先生の言うことを聞かない人は、心が大きくなりませんね」

 「それでいいの?」と、その子に聞くと、「ウーン」とうなって考えていました。しばらくして「何をしたら組立体操をするの?」と聞くと、「抱っこしてほしい!」と言うのです。思いもよらない本音に「そうだったのか」と、私たちも反省しました。

 なんだかんだ言っても、「自分を愛してほしい」のが、子どもの本音です。そこで、お帰りの会のあと、担任の保育士が「123……」と10まで数えながら抱いてあげると、嬉しそうにしていました。それからは毎日練習に励み、運動会では見事に組立体操を披露しました。

 子どもが皆と同じ行動をせずに一人だけ違う行動をするのは、「自分を愛してほしい」というサインなのです。このサインを見逃さないように注意することが大切です。

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 次回は、「子どものサインを見逃さない」をお届けします。



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