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心をのばす子育て 24

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

4、情の教育

■引き出す教育

 幼児期の子供を育てる時は「目と手と口」を使って育てていきます。よく観察して、よく手助けをして、よく話しかけて育てるのです。
 幼児には言葉は分からなくても話しかけが大切です。情を伝えるのに一番大きなウエイトを占めるのが言葉です。友達をつくる時でも一番大切なのは言葉です。
 ですから情を育てるためには言葉というものを最も意識します。この時期に算数や理科等の勉強を意識する必要はありません。すべての勉強の土台は言葉であり、国語です。国語ができなければ、数学の文章題も理解できないのです。

 言葉を覚える時に気をつけるべきことがあります。言葉には「会話と読み書き」がありますが、ここには順番があります。最初が会話で、次が読み書きです。これを逆にして読み書きを最初にもってくると、会話ができなくなってしまいます。
 一番よく分かるのが日本の英語教育です。6年間も勉強したのに話せません。これは、順番を間違ったからです。自分一人だけが話せないなら自分の頭が悪いのですが、みんなができないのは明らかに勉強方法の問題です。最初に読み書きから始めたということと、会話の練習をしなかったのが原因です。

 幼児期の言葉は会話が重要です。人間関係をつくるときに読み書きではできません。
 やはり会話です。読み書きを始めるのは幼稚園の後半で十分です。この時期は小学生になる準備が必要だからです。それも遊びの中で覚えるのが一番ですから、かるた取りのようなものから始めるのがよいでしょう。一日か二日で覚えます。
 それまでは会話です。会話というのは言葉のキャッチボールですから、与えるだけでなく子供から言葉を引き出すことが大切です。子供がもっている自発性をはじめとして、愛情、創造性、主体性、言葉など、育てるものはすべて引き出すのです。
 親が子供に話しかける目的は、子供から言葉を引き出すことです。ですから、子供が話せるようになってきたら、今度は耳が重要になります。子育ての最初は「目と手と口」で育てますが、次は「目と耳」で育てます。よく観察して必要に応じて手も出しますが、それよりも意識するのは耳です。聞き上手になることが重要です。

 最近の子供は悩んだ時に、親にも先生にも何も話さない傾向があります。話すのはほとんど友達です。その友達がいい友達ならいいのですが、下手をすると誤った方向に行ってしまいます。
 ですから、常日ごろ子供の話を聞いて、子供が悩んだときに少しでも親に話してくれる習慣をつくっておかねばなりません。

 聞き上手になるには、まず子供の話に対して「うなずく」等の反応をすることです。「あなたの話を聞いていますよ」という態度を示すことです。うなずき方は個性ですから自分のうなずき方を研究しなければなりません。
 また、話を聞く時は「笑顔」が大切です。「喜んで聞いていますよ」という態度を示すのです。

 子供も幼稚園ぐらいになると「どうして?」とか、「これは何?」といろいろ聞いてきます。その時に簡単なことは答えていいのですが、たまには「あなたはどう思うの?」と逆に聞いてみてください。そうして考えるチャンスを与えれば、子供に考える力が養われます。
 もし、考えても答えが見つからなかったら、「じゃあ、一緒に考えようか」と言って、一緒に本でも読めばよいのです。このように、聞き上手とは子供から引き出すことです。

 親にとっては子供がいろいろと聞いてくると、忙しいのでつい「お父さんのところに行ってらっしゃい」と言ってしまったりします。また、子供の話は繰り返しや接続詞も多いので聞くのは大変です。
 それに、大概の子供の話は途中で内容が分かってしまいます。それでつい「こう言いたいんでしょ」と、話の腰を折ってしまうことがあります。大人でも話の腰を折られるのは気分の悪いものです。ですから、子供の話を聞くには「忍耐」が必要です。

 それから大切なのは驚くことです。子供の話に感動することです。つまらない話でも「そう、すごいわねえ」と驚いて聞いてやります。そうすることによって、子供が話すことに自信をもちます。話すことに自信をもてば、よく話す子になります。話せば情が流れます。
 親が反応しなければ、「話してもつまらなそうだな。聞いてくれないのなら話さないでおこう」と子供は考えるようになります。話すことが苦手になると情が詰まってきます。海外で暮らしてみるとよく分かりますが、言いたいことが言えないと本当に情が詰まります。情が詰まると感情がヒステリックになっていきます。すぐ切れるのです。
 現代に多い切れる子供は、「言いたいことが言えないで情が詰まっている子供」か、「躾(しつ)けられていなくてわがままな子」かのどちらかです。

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 次回は、「情の解放は対話から」をお届けします。