https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4163

心をのばす子育て 22

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

4、情の教育

■思いやり

 3歳から6歳の年齢は幼稚園の時期です。幼稚園に入ると友達との関係がつくられます。それまでの子供は親子・家族関係が中心です。愛情を受けることが中心でした。
 幼児期の子供は「親の愛の反射」として、親への情が出てきます。自分の意志で主体的に出しているのではありません。親からの愛を受けて返しているだけなのです。

 さらに、親子の関係では多少のわがままは許されてきましたが、友達はわがままをそのまま受け入れてはくれません。この時、初めて我慢しなければいけないことを学ぶのです。
 そうして人に対しての情が出てきます。「思いやり」が出てきます。受け身ではなく、子供の主体的な情が出始めるのです。

 3歳までの子供にはまだ思いやりは育っていません。弟や妹を可愛がったとしても、それは好奇心から出てくるものです。思いやりが芽生えるのは3歳くらいからで、この時期が人間関係のスタートになります。
 人間関係は最初からうまくいくものではありません。幼稚園の子供はよくケンカをします。自分のやりたいこと、自分の言いたいことを素直に出して、うまくいかない時にケンカになるのです。

 その時、こうすると相手は嫌がるのだということを学ぶのです。この時期の「ケンカ」は人間関係を学んでいるのです。

 この時期のケンカがいいのは、すぐ仲直りができることです。兄弟でもよくケンカをします。仲良く遊んでいると思っていたら、いつのまにかケンカを始め、ケンカをしていると思ったら仲直りしています。後に尾を引かないのです。
 この幼時期に人間関係の基礎をつくっておかないと、中学生くらいになって問題が出てきます。友達とのつきあいが難しくなるのです。中学生になってから人間関係を学ぼうとするのは大変です。
 なぜなら、失敗してケンカになったら、後で取り返しがつきにくいからです。ですから思ったことが言えず、気を遣いながらつきあうことになるのです。
 人間関係の土台をつくるのは、思ったことを言って、ケンカをしてもまた仲良くなれる、自由にケンカができる幼稚園か小学校までです。
 最初から人間関係はうまくいきません。さまざまなケンカなど問題を通しながら子供は学ぶわけですから、この時期、問題が起こることを悪いと考えては失敗します。

 以上をまとめると、この幼児期の順調な子供は7か月くらいから人見知りが始まって、イタズラ好きで、落ち着きがなくて、親に逆らって、よくケンカをするということです。問題は、このような子供が親にとっていい子、順調な子供だという認識が親にあるかということです。
 もし、この認識がないとすると、ほとんど腹が立つことばかりです。ですから、親の発想を変えなければなりません。こういう子供こそ情が解放されていて、伸びやかな子供です。

 情が解放されているからこそ、自分のやりたいことが何の不安もなく恐れもなく素直にできるのです。時には親に向かって逆らうこともできるのです。
 時折反抗できるのは親子関係ができている証拠です。反抗しても親の愛が変わらないという信頼があるからです。
 ただ、反抗やケンカがいつまでも続くのでは困ります。よく「兄弟はケンカするものだ」と言います。確かにそうなのですが、ケンカしているのは好ましい状態ではありません。ケンカをしながら、目指すのは仲良くなることです。
 ケンカを心配する必要もありませんが、放っておいていいわけではありません。これを次の「知の教育」で躾(しつ)けるのです。

---

 次回は、「自由遊び」をお届けします。