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スマホで立ち読み Vol.30
子どもの心をひらく 2

村上小夜子・著

(光言社・刊『子どもの心をひらく』〈20161030日初版発行〉より)

 スマホで立ち読み第30弾、『子どもの心をひらく』を毎週月曜日(予定)にお届けします。
 長年、幼児教育に携わってきた村上小夜子・光の子園副園長が、その経験から得た内容を紹介しています。「ねばならない」「こうあるべき」という教育から、子供が本来持っている神性を引き出す教育へと転換する方法をお伝えします!

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1章 したいことをさせる

5歳頃までは思いきりやらせる

 卒園生に聞いて驚きました。

 光の子園は「楽しかった!」「おもしろかった!」ことしか覚えていないと言うのです。覚えているのは、年長の時の運動会とか、3学期にやる発表会のこと、友達と遊んだことくらいで、中には、ほとんど覚えていないという人もいました。

 昔、1980年代、1990年代、2000年代の初めの頃は、園児たちに厳しく教育をしました。立派な子女にするために、「ねばならない」「こうあるべき」という考えが強かったのです。しかし、求めてきたのは「心情教育」です。それが開かれてきたのは、2004年以降でした。

 人は、「物心が付く」のは4歳から6歳頃とも言われており、人によって差があります。そうだとすれば、子どもが小さいとき、5歳頃までは、その子が思うこと、やりたいことを思い切りやらせてみたら良かったんだ、という思いになりました。それがどんなに大変かは、考えただけでもわかりました。壮絶です。しかし、光の子園全体で腹をくくったのです。「母になって、全部甘受してみよう」です。「私ですね」で受け止めようということになりました。

 小学校に上がる前の子どもは、子どもなりの自立をして学校に上がっていきます。集団生活ができるようになります。しかし、それは外見から見ただけであって、心はどうでしょうか。年齢に応じて、心が満足し、納得しているかどうかです。光の子園は「心情教育」が基本ですから、心の教育に力を注ぐことにしました。

 2010年以降、4年保育(2歳児から5歳児まで)が始まりました。本当に、泣きたい時は泣かせ、好きなことは思い切りやらせて、受け止めてみました。一番長く泣いた園児は2歳児で、45分間泣き続けました。泣いている間は、いくらなだめても、すかしてもだめです。

 危険のないところで思い切り泣かせるのです。元気になった時に泣いた理由を聞いて、「今度は泣かないで、お話ししようね」と言うと、「わかった」と言うのです。そんなふうなことが2年間くらい続きましたが、年中の時には15分くらいにまでなりました。もう十分お話ができる年齢に成長しました。

 しかしその時は、あまりに泣いたので、お母さんに携帯で電話しました。「〇〇くんがずっと泣いています。どうしたらよいでしょう?」と相談すると、「ほっといてください! 家でもそうなんです。お姉ちゃんともけんかして言うこと聞かないし!」と、お母さんがキレました。それで、他の園児たちにも「そうだって、ほっとこうね」と言うと、それを聞いていた本人がピタッと泣きやんでしまいました。自分のやり方がどこにも通用しないと観念してか、それ以来、一切自分の思いを通そうとして泣こうとはしなくなりました。

 言葉で心の内を表現できるようになったのもあります。その子は、絵画がとても上手な子でした。子どもとは思えないタッチで下絵を描き、色も何色も重ね塗りをして、深い色合いを表現しました。忘れられない一人です。

 心が納得して行動に移すまでには、やはり、時間がかかります。わかっていても、そのようにできないジレンマは、誰もが感じることです。簡単に、「黙れ!」で一喝すれば、子どもはその場は聞きます。しかし、心が納得しないと、同じ繰り返しをしてしまいます。

 いけないことをしたら、怒られるのは当然です。心が納得すれば、二度としないと決めるのですが、そうでないと、大人が見ていないところで悪さをするようになります。外見から見ると、わかったような顔をしているので、心も身体も5歳、6歳で物心が付いて、年齢に応じた成長をしているなと思いますが、それは、大人の錯覚です。

 身体と同じようには、心は成長していないのです。物心が付くまでに、自分の感情を全部出して、それでも「僕(私)は、お父さんとお母さんから愛されている」という実感を持った子どもは、心が自由で、分別と自信のある子どもに育っていきます。

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 次回は、「子どもの本音」をお届けします。



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