2023.12.30 17:00
心をのばす子育て 19
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。
長瀬雅・著
3、一人前の人間に育てる
■人間性は思想で育つ
子供の情を育てるには愛の言葉が大切です。しかし、子供の人間性を育てるには、その言葉に「思想」が必要になります。現代の日本にはこの思想がほとんどありません。
いくつか残っているものの一つが「人に迷惑をかけない」です。これが間違っているというわけではありませんが、これでは不十分です。これでは人間性が育たないのです。
この言葉を裏返せば、人に迷惑をかけなければ何をやってもかまわないということになりかねないからです。正に、その結果としてずうずうしい子供が増えてきたと言えるのではないでしょうか。
さらに、迷惑と感じることは人によって違うし、何が迷惑なのか正確には分からないものです。そうすると、触らぬ神にたたりなしとなり、人間関係が希薄になります。最近の若者の人づきあいが下手になった理由に、「人に迷惑をかけるな」という日本独自の思想の影響があるのではないでしょうか。
つまり、今の日本の教育が人間性を育てられないのは、育てるための理念、思想が足らないからなのです。
今日の中学生に、万引きと援助交際とどちらがより悪いと思うかと尋ねると、子供たちは6対4くらいで「万引きが悪い」と言います。理由は万引きのほうが迷惑だということがはっきり分かるからです。お店にとって迷惑だと誰もが納得できるのです。
ところが、性の問題は迷惑だということが分かり難いのです。援助交際と言いますが、実際は売春です。彼女たちにやめさせようと思って話すと必ず出る一言は、今も昔も変わらず「誰にも迷惑をかけていない」なのです。「自分はお金をもらってうれしいし、相手も喜んでいる。誰にも迷惑をかけていないからいいじゃない」と言われたら、どう答えますか。
ここで問題なのは、性の話を人の迷惑で語ることです。性の話は人の迷惑では語れません。次元が違うのです。これは人生の問題としてとらえなければ語れない内容なのです。
親にとって子供の性の問題は心配です。ところが、子供と話し合いたいと思ってもどう話したらよいのか分からないのです。それは人生観がないからです。
実際、人に迷惑をかけないで生きることなどできません。小さいころは親に、その後は先生、友達、親戚、上司……いろいろな人に迷惑をかけて生きるのです。
しかし、この「迷惑をかける」を「世話になった」と考えると、どうなるでしょうか。親、先生、友達、上司の世話になって生きてきたと考えるのです。そうすると「後でお返しをしなければ」とか、「感謝」という気持ちが生まれてきます。
このように同じ行為を迷惑と取るか、お世話になったと取るかの違いで、育つ人間性が変わってきます。このように人間性は思想によって大きく変わってきます。この思想が人生観です。
子供が小学生になるころには、こういうものを徐々に学んでおかなければいけません。親の言葉かけで子供は変わりますから、親の責任は非常に重要です。
そして人生観を学ぶなら、よりよい人生観を学ぶ必要があります。
それは「情と知と意を統一して育てるという理念」です。これについて順を追って述べていきましょう。
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次回は、「親子関係」をお届けします。