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心をのばす子育て 18

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

3、一人前の人間に育てる

■親の子供に対する信頼感

 育てるという面から見ると、日本の子供は中学生以降からはあまり成長していません。それは幼児期の「情」は親の愛情で育ちますから、親としてそんなに勉強する必要はありません。それに本屋には幼児期の本が山ほどあります。
 ところが「知」の時期では、躾(しつ)け・訓練をするために子供に何を教え、訓練するかが問題となります。ですから中学生以上の子供を育てるためには何を教え、訓練するかを、親としてまず学ばなければなりません。ところが、前述したように中学生以上の子供を育てる人間教育の理念が本当にないのです。

 さらに、躾けを始めるのは中学生よりも小学生の時から始めなければなりません。小学生の時は子供のほうから近づいてくれます。「どっか連れてって」と言うのです。
 ところが中学に入ると、家族でどこかへ行こうとか言うと、「友達と遊ぶから」とか「クラブがあるから」と言って、少しずつ親から離れ始めるのです。

 これは子供の成長としては順調な現象なのですが、子供に対する信頼感がないと親は不安になります。そうすると、チェック行動が強まります。
 「どこに行ってきたの?」「お金は何に使ったの?」と監視が始まるのです。これは子供にとっては当然気分が良くありません。そして、親子関係が荒れていきます。
 ですから親離れが始まる前、小学生くらいからある程度の躾けをしなければいけません。躾けをすることで親の子供に対する信頼感が生まれるのです。
 親子の愛情で「子供から親に対する信頼感」が大切だと前述しましたが、「親の子供に対する信頼感」も大切なのです。「この子は自分が見ていなくても大丈夫だ」という信頼感です。これができれば子離れができます。躾けとは、親の子に対する信頼感を設くのが目的であるとも言えます。

 ただ、躾けが大事だからといって、幼児期から躾けを強調してしまう人がいますが、これは失敗します。幼児期から躾けを強調すると「型にはめてしまう教育」になってしまいます。これは子供への押しつけにつながります。

 それは盆栽みたいな人間と言えるかもしれません。盆栽は小さい時から将来の形を想像しながら、ハリガネで枝をねじ曲げて育てるのです。見た目はきれいでも、伸びやかな大木にはならないでしょう。
 盆栽ならそれでいいのですが、人間はそれでは困ります。大きな人間にしようと思えば、本人の情を解放して主体的な情を育て、それから次に情の流れを修正していきます。これが本来の教育の流れです。

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 次回は、「人間性は思想で育つ」をお届けします。