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ほぼ5分で読める勝共理論 7
保守と革新、「憲法」の捉え方の違い

編集部編

まとまらない憲法論議
 テレビを見ていると、憲法改正の話し合いというのは、全くまとまらないことが多いですね。まるでけんかをしているみたいだな、と思ったことはありませんか。

 実はこれには理由があります。
 それは、「そもそも憲法とは何なのか」という捉え方の根本の部分が、保守と革新(リベラル)ではだいぶ違うからなのです。

 この違いが分からないと、憲法のニュースの意味がなかなか分かりません。
 今回はこの点について、つまり「保守と革新における憲法の捉え方の違い」について説明します。

革新の人々の憲法の捉え方
 まず、革新の立場です。難しく言うと「社会契約説」という捉え方です。
 社会契約説は、「国がない」という状態を前提として考えます。もちろん法律もないし、警察もいません。ですから人々はいつももめ事や争いなどで困っています。

 そこで人々は、みんなで話し合って契約を結ぶことにしました。みんなでお金を出し合って政府をつくろうという契約です。このお金が税金です。そしてルールを破る人を捕まえるために、政府に強い力を与えました。これが警察です。他国から攻められた時のために軍隊もつくりました。こうして国家が誕生したというわけです。

 しかし失敗もありました。強い力を得た政府が、国民に対して悪いことをし始めたのです。これではせっかくの契約が台無しです。そこで人々は、政府が悪いことをしないように、政府を縛るための厳しいルールをつくることにしました。これが憲法です。

 以上が社会契約説のストーリーです。
 もちろん一つの説であって、本当にそういう事実があったというわけではありません。
 ポイントは、社会の中で最も重要なのは個人である、ということです。個人の権利を守るために、憲法や国家ができたということです。実は日本の憲法もこの立場に立っています。

保守の人々の憲法の捉え方
 次に保守の立場を説明します。
 保守は、古くからの文化を大切にすべきだ、という考え方です。

 例えば日本では、古くから「和を以て貴しとなす」という価値観があります。
 「人々が争ってきたので、いいことは何もなかった。やはり調和が大事だ。あるいは個人も大切だけれど、やはり家族を大切にしてこそ人々は幸せになれるのだ」

 そのようにして、理論理屈というよりは、先人たちの知恵の積み重ねと、長い歴史を通して道徳や文化がつくられてきました。

 そしてある時、この文化を無視する支配者が現れました。
 人々は考えました。「たとえ支配者でも、伝統文化は守らないといけない」と。

 もちろん時代に合わせて変えるべきところは変えるけれども、大切なところは残していこう、それを形にしていこう、そのようにしてできたのが憲法だ、という考えです。

 もちろん個人も大切なのですが、それと同じぐらい、道徳や文化が大切だ、家族制度が大切だ、ということになります。

根本の思想が違う保守と革新
 憲法の捉え方には大きく分けて二つの立場があるということです。

 革新の立場では、個人の権利を守るために国や憲法がつくられたと考えます。最も大事なのは個人であり、その個人を守るのが憲法だ、という考え方です。
 極端なことを言えば、国民みんなが「家族制度は要らない」と考えれば、そういう憲法をつくればいいということになります。

 そして保守の立場では、家族を大切にしてきたのが伝統文化である。個人の権利は守らなければならないが、伝統文化とうまく調和させていかなければならない。古くからの歴史や伝統を大事にしていこう、それを形にしたものが憲法だ、と考えます。

 「家族が大切だ」という考え方も、たとえ理論的な根拠がなくても構わない、それが日本の文化だ、ということになります。

 日本国憲法は革新の立場ですから、「憲法は改正すべきだ」というのは、ほとんど保守の立場です。そして憲法改正を反対するのは革新の立場の人たちです。

 両者の言い分をよく聞くとこのことが分かります。お互いの根本の思想の部分が違うので、話し合いがまとまらないのです。

 次回は、日本の憲法がどのようにできたのか、という歴史的経緯について説明します。