2023.11.25 17:00
心をのばす子育て 14
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。
長瀬雅・著
3、一人前の人間に育てる
■時と順番と量
「育てる」ということを考えるときには「時と順番と量」を注意する必要があります。私たちが植物を育てる時にはこれに気をつけています。秋に咲く花は秋、春に咲く花は春と、すべてに時が決まっています。春に咲く花を秋に咲かせようとしても無理です。春まで待つしかありません。
子育ても同じです。子供の心にも「育つ時」というものがありますから、時が来るまで待つという姿勢が必要です。
次に順番があります。花なら「根→芽→葉→花→実」と成長していきます。いきなり花が咲いてほしいと思ってもそうはいきません。
また、それぞれの時期において育て方が違います。順番に応じた、成長に応じた育て方をする必要があります。子供には成長期間があります。いきなり完成はしません。何もできない、不完全な存在からスタートするのです。
ですから「子供の不完全さ」を受け入れるべきです。そしてその成長に応じた教育をしなければなりません。時を待ちきれずに無理をしたり、時を間違えた教育をしたのでは心は育ちません。
そして、もう一つが量の問題です。植物には時と順番に応じて水や肥料を与えますが、その量が問題です。与えなければ枯れ、逆に与え過ぎてもダメになります。水も与えすぎると根腐れを起こします。それぞれに適量があります。植物は水や肥料を与えすぎると、大概ひ弱になりすぐ病気になります。子供も与えすぎると、ひ弱になります。
子供の教育も教えるということだけを考えるなら、大量に早くから教えたほうがいいでしょう。しかし、育てるということに注目すれば、「時と順番と量」があります。これが狂った時、子供はおかしくなるのです。
●体験を通して育つ
ここで注意すべきことは、教えただけでは育たないということです。体験を通して育ちます。体験することによって育っていきます。
ですから、親として意識しなければならないことは、「体験の場」「環境」を与えることです。その中で「教育、躾(しつ)け、訓練」が生きてくるのです。友達との関係をつくりたいと思うなら、友達と遊ぶ環境を与えるのです。主体性をつくりたいなら一人で考えて行動する場を与えます。創造性も生活体験の中で創意工夫として生まれてくるものです。
●知情意を育てる
「心を育てる」ということを具体的にいえば、心の機能である「知と情と意」の三つを育てることになります。一人前の人間とは主体性と責任感のある人間だと前述しましたが、これは意的側面から評価したものです。
しかし、人間の心には知・情・意の三つの側面があるわけですから、情的側面から見るなら愛情、知的側面からは創造性、意的側面からは主体性、この「愛情と創造性と主体性」が子育てにおいて育てられるべきものです。
ただ、この主体性などが前述したように間違った方向に行くと困りますから、これらを正しい方向に向けさせるために「教育・躾け・訓練」をします。
では、この知・情・意の「時と順番と量」を考えましょう。
まず、この三つの中で一番大きなウエイトを占めているものは「情」です。親はとかく「知」に意識が集中しがちです。しかし、「知」は「情」が安定しないと働きません。悩みごとを抱えていたり、心配事があったら考えはまとまりません。本を読んでいても気がついたら、頭に全く入っていなかったということがあります。
子供も同じで、情が安定していないと勉強はできません。子供に勉強させようと思うなら、情を安定させて、勉強を好きにさせることです。嫌いにさせてはいけません。
よく小さいころから勉強をやらせれば、習慣になって勉強をやる子になると言います。しかし、奴隷に仕事をいくらさせても、仕事をよくする奴隷にはなりません。いくらやらせても習慣にはなりません。小さい時に勉強を無理やりやらせて勉強が嫌いになってしまったら、親の圧力が弱まればすぐに勉強しなくなります。
「情」というのは本当に強いものです。小さい時に嫌いな食べ物は大人になっても嫌いということがあります。親が説得してもダメです。「知」より「情」のほうが強いのです。その子にその食べ物を好きにさせる方法は、料理を工夫して、その子においしいということを教えるしかありません。勉強を好きにさせない限り、勉強の意欲は出てきません。
このようにすべての土台は「情」です。「知や意」はその次に来るものです。ですから心が育ってくれば勉強もできる子供になっていくのです。
よく心の教育というと学校の勉強とは相反するように思われますが、そうではありません。互いに切っても切れない関係があるものです。
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次回は、「年齢と子育て」をお届けします。