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心をのばす子育て 13

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

3、一人前の人間に育てる

■主体性と責任感

 子育ての目的は「一人前の人間に育てる」ことです。では、一人前の人間とはどのような人でしょう。一人前とは単に誰の助けも借りないで、一人で生きられるということではありません。一人前の人間とは、まず主体的に生きている人のことです。
 この主体的に生きるということを、自分のやりたいことをするという意味で取る人がいますが、それでは自己中心的で自分勝手な人間になってしまいます。主体的に生きるとは、自分の意志で行動しながらその結果に責任が取れる人のことです。ですから、一人前の人間にするなら、この「主体性と責任感」を育てることです。

 実は現代の日本の子育てで最も欠けているのが「主体性と責任感を育てる教育」なのです。日本では子供に責任を取らせるより、親が全部責任を取ってしまいます。昔から「子は親の鏡」と言って、子供の問題は親の責任という見方がありますから、子供が問題を起こすと「親の顔が見てみたい」とよく言います。
 しかし、そうではありません。子供にも責任があります。自分の行動の結果に本人が責任を取らないで親が尻ぬぐいをしていると、子供は親に頼って無責任な人間になってしまいます。
 小さいときから自分が責任を取るということを教えてあげなければいけません。そうしないと、年齢が高くなり親が尻ぬぐいできなくなった時は取り返しがつかないということもあります。

 一人前の人間になるには、主体性と責任感のほかにも当然育てなければならないものが数多くあります。それらをまとめて「心を育てる」と言います。心が育てば仕事や生活は自然についてきます。心が育っていれば、どのような状況になっても大丈夫です。
 逆に心が育っていないと順調な時はよいのですが、いったん逆境になった時はもろく崩れていきます。最近の子供は心が育っていません。頭は良いのに、心がおかしい子供の事件が増えてきています。

 日本の教育は「教える」という面は豊富なのですが、「育てる」という面が欠けています。その結果として頭は良いが心が育っていない子が増えてしまったのです。戦後、知識中心で心の教育をおろそかにしてきたつけが回ってきたのです。
 最近その反省から「ゆとりの教育」「心の教育」を訴えていますが、実際どうすれば心が育つかというカリキュラムが十分提示されていません。そしてその結果は学力が低下し、自己中心な若者が増えただけという惨めなありさまです。

 この「心の教育」を学校でやるには難しい問題があります。なぜなら心を育てるにはいろいろな価値観(人生観、家庭観、社会観、善悪観……)を教える必要があるからです。
 ところがそのような価値観は宗教が説いてきたものです。今の日本の学校では宗教的なものは教育できません。なぜなら、生徒の家庭はそれぞれの宗教をもっているので、学校としてはそこまで踏み込むことは不可能です。
 ある県では、公立の幼稚園でクリスマスもやらない所があります。その理由は、クリスマスというのはキリスト教の行事だからです。また、宗教的でなくても、一つの思想を教えるということは現在の日本の公立学校ではできません。学校でできるのは思想の内容ではなく、その思想の知識だけです。
 ですから「心の教育」は家庭で行わなければなりません。それに、本来「育てる教育」は家庭で行うものです。親がしっかりしないと子供は成長しません。

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 次回は、「時と順番と量」をお届けします。