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心をのばす子育て 12

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

2、親が子育てのスタート

■親と子の信頼関係

 子供に対するさまざまな感情や思いは、親の心構えから生まれてきます。誤った心からは、誤った思いが生じてきます。その誤った子供の見つめ方に、「この子は私の子」という見つめ方があります。子供に対して人から何か言われると、「この子は私の子だから、人から言われたくはありません」という言い方をする人がいます。子供は自分のものという所有観念が強いのです。そうなると「……をしなさい。愛してやったんだから感謝しなさい。親が決めたとおりにしなさい」というふうに押しつけが強くなります。押しつけられたものは、子供には愛情として映りません。また、順調にいっている時は良いのですが、うまくいかなかったら子供は親を恨むようになります。親の言うとおりにやったのに、うまくいかなかったのは親が悪いとなるのです。そうして家庭内暴力が始まった例が数多くあります。子供も押しつけられている間は問題を起こしませんが、一人になるとタガがはずれて好き勝手をやるようになる場合があります。主体性と責任感が育っていないからです。

 また、自分のものと思うと、子供は親の言うことを聞くものだという発想が生まれます。そうすると反抗や逆らうことが許せません。子供は大きくなれば自立していくものです。自立とは親から離れることですから、親の意見と合わないことが出るのも当然です。この自立が反抗に映るのです。反抗に見えると腹も立ちますし、力ずくでも言うことを聞かせようという思いがわいてきます。

 実は、この「押しつけ」は善意の思いから起きる場合もあります。動機が子供のための「この子をいい子にしよう」というものであることから、愛情や目的の押しつけと反抗を許さない子育てになることがありますから、気をつけなければなりません。このタイプの親が一番問題です。本人に間違ったことをしているという自覚がないからです。

 動機自体に問題はないからです。しかし、押しつけていると子供の「やる気」が消えていき、無気力な子供になってしまいます。

 子供は自分のものでなければ誰のものでしょうか。昔から「子供は天からの授かりもの」という言葉があります。これは親と子は別人格だということであり、天から預かったのだから責任をもって大切に育てなさいということです。別の人格をもった人間なら意見が合わないということがあるのが当然です。必要なのは子供との「信頼関係」をいかにつくるかということです。これが子育ての最初の目的です。

 その信頼関係は、力ずくや押しつけではつくれません。親子の「対話」の中でつくられるものです。対話をするためには言葉遣いに気をつけなければなりません。私たちは友達との友情(信頼関係)をつくる時には、言葉遣いに気をつけます。言っていいことと悪いことを区別しています。子供との対話の時も同じように考えればいいのです。友達に言えないようなことは子供にも言わなければ良いのです。しかし、よく子供にひどいことを言っている母親がいます。友達だったら完全に切れるようなことを子供に対しては平気で言っています。当然子供の心は傷ついています。信頼関係をつくるには愛情あふれる言葉が必要なのです。

 ただ、あくまで言葉は心を伝える「手段のうちの一つ」であるということを忘れてはいけません。問題は心です。心が伴わない言葉は子供にすぐ見破られます。よくレストランなどで丁寧な言葉で接待を受けても何か杓子(しゃくし)定規で、逆に気分が悪くなることがあります。ですから、まず親の心に子供と信頼関係をつくりたいという「愛の心構え」が必要です。それから対話です。子供が「親に対する信頼感」をもったら、子供は安心感をもって伸びやかに成長していきます。そして、次に躾(しつ)けが始まります。子育てのすべては信頼の関係の中で順調に進みます。

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 次回は、「主体性と責任感」をお届けします。