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心をのばす子育て 11

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。

長瀬雅・著

(光言社・刊『心をのばす子育て7つのポイント』〈2002210日第2版発行〉より)

2、親が子育てのスタート

■親の位置

 「親の愛情」とともに必要なものに「親の位置」があります。これは親としての権威であり毅然(きぜん)とした態度です。権威は現在あまり良い意味でとらえられていません。それは権威や厳しさという場合、ともすると暴力的になったり、親の意見の押しつけになったりすることがあるからです。そのために親の権威を否定する考え方が広がってきたのです。そうして、親が「親の位置」を降りてしまい、子供と同列になってしまったのです。子供と友達になってしまうのです。友達では子供を躾(しつ)けることができません。極端になると子供に遠慮するようになったり、逆に子供の顔色をうかがってオドオドしたりする場合もあります。子供を躾ける時には親の位置が大切です。

 よく犬の訓練をしているテレビ番組がありますが、訓練されない犬は実にわがままで手に負えません。しかし、そのような犬になった原因は犬にあるのではなく、飼い主にあります。どこに問題があったのかは、訓練士がその犬を訓練するのを見ればよく分かります。訓練士がまずはっきりさせるのは、誰が主人かということです。その方法は訓練士の毅然とした態度と、言うことを聞いたときに示す愛情です。つまり、わがままになった原因は飼い主が躾けをしていなかったからです。飼い主は愛しているつもりで犬の面倒をいろいろと見ていたのに、犬のほうはそう思わないで、飼い主を自分より下だと見てしまっていたのです。ただ可愛がるのは本当の愛ではありません。

 この「位置」が崩れてきているのは親だけではありません。それは学校にも見られます。最近先生の位置が落ちてきて生徒と友達みたいになり、同レベルになってしまいました。最近の生徒は先生を呼び捨てにしています。その結果、生徒は先生の言うことを聞かなくなるのです。こうした結果が家庭内暴力や校内暴力なのです。

 ただ、親や先生の位置は必要ですが、その背景には慈愛、やさしさが必要です。権威や厳しさだけでは子供が潰(つぶ)れてしまいます。この場合の慈愛は何かというと「許し」です。厳しいばかりでは暴力です。厳しさの中にも許しがあれば子供は親の愛を感じます。

 許しという愛情があれば、権威と厳しさが入ってくるのです。家庭の中で許しがなかったら家庭はギスギスします。ただ、逆に許しが強くなりすぎるとルーズになりますから、バランスが必要です。

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 次回は、「親と子の信頼関係」をお届けします。