2023.11.24 12:00
スマホで立ち読み Vol.27
回顧録『愛あればこそ』10
久保木哲子・著
スマホで立ち読み第27弾、回顧録『愛あればこそ』を毎週金曜日(予定)にお届けします。
久保木修己・家庭連合初代会長の夫人である久保木哲子さん(430双)が、2023年9月18日に聖和されました。故人の多大な功績に敬意を表し、著作である『回顧録 愛あればこそ』を立ち読みでご紹介いたします。
ここでは第5章と第6章を試し読みいただけます。
---
第六章 グランドツアー
粋(いき)なパリの泥棒
パリでは、スリにやられるという珍事も起きました。
思いがけない出会いなど、ハプニングは旅の醍醐味(だいごみ)ですが、トラブルに遭遇するリスクもあります。
パリの教会員たちが何人か出迎えに来てくれていて、「やあ、やあ」と挨拶している時、カートに載せていたショルダーバッグが、いつの間にか消えていました。空港に着いた途端、バッグごとそっくり盗られてしまったのです。中には現金とカードの入った財布、それにパスポートも入っていました。
パスポートを再発行してもらわないと動けないので、大使館に行って手続きをし、何日間かパリに滞在しなければならなくなりました。
それでモンマントルに行ったりして1週間ほど過ごした後、大使館に仮パスポートを受け取りに行きました。ところが、「久保木さん、パスポートが戻ってきましたよ」と言うではありませんか。
泥棒が大使館にパスポートを郵送してくれたのです。異国の地に来てパスポートがないと困ると思ったのでしょう。日本で使うカードも返ってきました。お金は取られましたが、「パリの泥棒はなんと粋なことをするのか」と思いました。
仮パスポートは不要となりました。
予定を決めない世界一周旅行というのは、大変重宝で、こんないいことはありません。自由にいたいだけいられるし、目的が終わったら、ゆっくり移動すればよいのです。
ただ観光自体は、久保木は好きではありませんでした。観光には私だけ行かせて、「僕は部屋で休むよ」と言ってあまり出歩こうとしないのです。
その後、私たちはヨーロッパ各国を回り、続いてアメリカに渡りました。各国のリーダーたちと深い連帯の絆(きずな)を結ぶとともに、彼らの関心を極東に向けさせることに成功したと自負しています。
---
次回は、「文先生のグランドツアー」をお届けします。