2023.11.23 17:00
ほぼ5分で読める勝共理論 4
特異な日本の「左翼」
編集部編
今回は、日本の「左翼」についてのお話です。
江戸から明治へ
さて、皆さんは日本が江戸時代から明治時代へとどのように変化していったのか、ご存じでしょうか。
江戸時代といえば、みんな和服を着ていて、頭にはちょんまげを結わえて、侍が刀を持ち歩いていたような時代です。
そこにアメリカ人のペリー提督がやって来て、日本に開国を要求しました。
日本の人たちは、このままでは他のアジアの国々と同じように欧米の植民地になってしまうと考え、急いで欧米と同じような国づくりを始めました。
歴史の大転換期だったわけですが、もちろんみんながみんな同じ方向を向いていたわけではありません。
「何とか江戸幕府を支えてこれまでの日本を守っていこう」という人たちと、「いやいや江戸幕府ではとても欧米諸国にはかなわない。新しい日本にしていかないといけない」と考える人たちがいました。
この場合、江戸幕府を守ろうとする人たちが「右翼」、倒幕といって幕府を倒そうとした人たちが「左翼」ということになります。
倒幕の代表的人物といえば、坂本龍馬、西郷隆盛、桂小五郎(木戸孝允)などがいました。
戦争の時代
やがて日本は戦争の時代に入ります。当時は国を挙げて戦争をしていた時代ですが、そんな中でも国民が完全に同じ方向に向いていたわけではありません。
例えば、与謝野晶子という詩人です。彼女は弟が戦争に行くのに反対して、「君、死に給うことなかれ」という反戦の歌を発表しました(日露戦争当時)。
彼女は男女平等教育にも取り組んでいて、日本で初めての男女共学の学校をつくることに貢献しました。この時代においては、彼女は左翼の立場に立っていた、ということになります。
つまりいつの時代にも、右翼と左翼の両方の立場の人たちがいたわけです。そのようにして社会が発展してきたのです。
共産主義って何?
そんな中、1920年ごろ、日本に「共産主義」が入ってきました。
「共産主義って一体何? 簡単に説明して」と言われると、簡単に説明するのは実はかなり難しいのですが、一言でいうと、共産主義を信じる人々は「共産主義」という理想の社会像を持っているということです。
彼らが言う理想の社会は、「戦争もなければ貧富の差もない。お金持ちも貧乏人もいない。みんなが平等で、みんなが生き生きと暮らしている。誰からの支配も受けないし、争う必要もない」、そんな社会だと言います。
ただ、ここからが重要なのですが、「それ以外の社会は全て間違っている、悪い社会だから倒さなければならない」と言っているのです。
共産主義の考え方で全てをつくり直さなければならないというわけです。
これを「マルクス・レーニン主義」といいます。その考え方では、「理想的な社会の実現のためなら暴力を使っても構わない。人殺しをしてもいい」と言っているのです。
このような考え方でつくられた国が、旧ソ連や中華人民共和国、そして北朝鮮です。
日本には共産主義がまん延している?
「今の世の中を変える」という意味では、共産主義は左翼です。ですが、「共産主義以外は全て間違っている、それ以外の考え方は全てだめだ」という点では、それまでの日本の左翼とは全く違います。
そしてこの共産主義が、日本はかなり広がってしまいました。共産主義ではない国、つまり世界の民主主義国家の中で、共産主義者が一番広がった国が日本です。
それで日本では、「左翼=共産主義」というイメージが広がりました。
そして共産主義の人たちは、自分たちに反対する人たちを全て「右翼」と呼ぶようになりました。
「軍国主義者だ。戦争したがっている」と決め付けて批判したのです。
このようにして、右翼というと日本では、「極端な人たち」「危険な人たち」というイメージが持たれるようになってしまったのです。
次回は、共産主義がなぜ暴力的な活動をするのかということについてお話しします。