2023.11.10 12:00
スマホで立ち読み Vol.27
回顧録『愛あればこそ』8
久保木哲子・著
スマホで立ち読み第27弾、回顧録『愛あればこそ』を毎週金曜日(予定)にお届けします。
久保木修己・家庭連合初代会長の夫人である久保木哲子さん(430双)が、2023年9月18日に聖和されました。故人の多大な功績に敬意を表し、著作である『回顧録 愛あればこそ』を立ち読みでご紹介いたします。
ここでは第5章と第6章を試し読みいただけます。
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第六章 グランドツアー
ローマ法王に謁見
ローマ法王パウロ6世に謁見(えっけん)したのは、(1971年)6月16日でした。
法王に謁見できたのは、台湾のカトリック界の重鎮であるユー・ピン枢機卿の仲介によるものでした。枢機卿はローマ法王に紹介状を書いてくださいました。また駐バチカン大使館に彼の甥(おい)がいましたので、彼に直接連絡して、取り計らってもらいました。パウロ6世はその頃病気がちで、あまり人と会うことができないと言われていましたので、まさに奇跡的なことでした。
バチカンに着いた時、私たちは真っ先にバチカンの聖地に向かい、そこで祈りました。その時、突然激しいにわか雨が降り出しました。ローマはここ2、3カ月雨が降っていないと聞いていましたので、何かを天が私たちに告げているに違いないという厳粛な気持ちにさせられたことを覚えています。
私は法王に謁見する前日の夜まで、法王の前に出るのに、紺か黒系統の衣服が必要であることを知りませんでした。それが前日の夜に分かり、大慌てです。久保木は背広を用意していましたが、私は黒の洋服などありません。店はもう閉まっています。翌朝、店が開くと一番に入って、黒の洋服を買い、10時半に法王に謁見することになりました。
久保木は法王の前に出て、こう言いました。
「法王、世界が今難しい状態にある時、あなたがこの位置にあるのは、神がある願いを持って、この位置に置いているのだと思います。あなたはいつも欧米には関心を持っていらっしゃいますが、もっと極東に関心を持ってください。そしてその意味を祈ってほしいのです」
法王はうなずきながら、「よく分かっています。私はこのほどアジアを回ってきましたが、深刻な問題があることをよく知っています。また、日本の復興を知り、深い尊敬の念を持っています。アジア旅行以来、私はアジアのために祈っています」と答えられました。
久保木はまた、「日本では今、若者たちが中心になって、国と世界を立て直すために頑張っています。私たちがいる限り、神は日本を守るだろうと思います」と申し上げました。
久保木が話し終えると、法王は身を乗り出して、久保木の手をしっかりと握り締めました。その頃、喉頭がんを患っていた法王は、久保木の手をいつまでも離さず、まるで久保木に何かを託しているかのような感じを受けたほどでした。
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次回は、「トルコでの歓迎」をお届けします。