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終活ポイント講座 10

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

13 遺留分について
 ここまで遺産相続にまつわる幾つかのキーワードを解説してきましたが、最後に相続に関する制度の中で、特に重要視されている「遺留分」について紹介します。

 遺留分とは、相続人が最低限の遺産を確保するための制度です。遺産全体の2分の1が遺留分として認められているため、法定相続人である故人の配偶者、子供(または孫)、親(または祖父母)であれば、遺留分の範囲内で遺産の分割を求めることができます。直系尊属(故人の父母あるいは祖父母)のみが相続人の場合、この割合が全体の3分の1になります。

 ある未亡人Aさんの事例で説明します。Aさんには長男と長女がいました。Aさんは長女の家族と同居し、孫に囲まれて生活したのちに大往生したのです。遺言書には「全ての財産は長女に相続させる」と書かれていました。遺言執行者は長男の同意を得なくても、遺言に基づき長女が相続する手続きを進めることができます。

 しかし、長男には遺留分を請求できる権利があります。ですから長男が請求すれば、法律で認められている分の財産を引き渡さなければなりません。ただ、遺留分の請求には期限があるので注意が必要です。

 また相続人の中でも、兄弟姉妹には遺留分がありません。したがって、相続人に兄弟姉妹が含まれる場合は、遺言書で子や配偶者だけに遺産を相続させても、遺留分を巡る争いは起きません。

 いろいろと複雑な内容を書き連ねましたが、相続争いを防ぐ最も良い方法は、やはり家族が仲良くすることです。これに勝るものは他にありません。遺言書を作成する場合でも、ある程度、相続人にその内容を伝えておけば、お互いに心の準備ができます。遺産相続のあとも人間関係が続くことを考えると、そのほうが望ましいのです。

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 次回は、「祝福家庭が臨終を迎えたら」をお届けします。