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終活ポイント講座 9

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

12 納税と相続放棄
 前述のように、遺言書に遺言執行者の指定がある場合は、故人が指名した遺言執行者が遺言書に従って相続の手続きをします。不動産の場合は、名義の書き換えなども行います。

 遺言書がない場合は、相続人全員参加の協議により遺産分割協議書を作成し、各相続人は故人の財産を相続します。不動産の所有権移転登記は、その所在地を管轄する法務局で行います。その際に登記原因証明情報として遺産分割協議書を提出します。

 そして相続から10か月以内に、住んでいる地域の税務署で、各自が相続税の申告と納税を行うことになっています。

 しかし、全ての遺産に税金が発生するのではなく、基礎控除の3000万円と相続人の人数×600万円を合わせた額については課税されません。この控除額を超えた金額に対して10%から55%を相続税として納めます。このときの税率は、相続した金額によって変わります。しかも配偶者控除などさまざまな特例もあり、実際の相続税の金額は個々のケースによって違います。

 税務署には不動産や金融機関の口座などの情報を把握する権限があるため、控除分を上回る財産が相続されているにもかかわらず、申告されていない場合は、調査を行ったあとに「納税がまだですよ」と税務署から相続人に連絡が来ます。

 ところで冒頭でも触れましたが、故人に多額の借金がある場合、これも相続する財産に含まれます。その場合、家庭裁判所で「相続放棄」という手続きを行うことが認められていますが、その場合は借金だけでなく、全ての財産についての相続を放棄することになります。

 相続放棄の手続きは、相続開始を知ったときから3か月以内という期限があります。これを過ぎると借金の相続を承認したことになり、故人の代わりに相続人が返済しなければなりません。また、配偶者や子供に続いて親まで相続放棄をした場合は、相続人が兄弟姉妹に移り、故人の代わりに借金を負うことになります。それを防ぐには、その人たちにも相続放棄をしてもらわなければなりません。

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 次回は、「遺留分について」をお届けします。