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終活ポイント講座 8

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

11 スムーズに相続を進めるための方法
 相続関係が複雑になることを防ぐには、2つの方法があります。

 1つは、遺言書を残す方法です。「誰々にどの財産を相続させる、あるいは※遺贈する」という意思を、故人が生前に書面で残すもので、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つがあります。
※遺贈=財産の所有者が、自分の死後に無償で財産を人に譲ること

 公正証書遺言とは、公証役場で作成する遺言書のことです。法律の専門家である公証人に内容のアドバイスを受け、本人に渡されるだけでなく、公証役場に原本が保管されるため、紛失や偽造などの恐れがない点で安心でき、公文書として扱われます。

 自筆証書遺言は、自筆で書かれた遺言書です。最近、民法の改正により、財産目録についてはパソコンで作成した資料などを添付することが可能となりました。

 また、公正証書の場合とは違い、遺言者の他界後、家庭裁判所に検認の手続きを申請しなければなりません。しかし、生前に自筆証書遺言書を法務局に預け、その証明書がある場合は、この検認手続きが不要になりました。いずれにしろ、遺言書の作成については、専門家に相談することをお勧めします。

 遺言書には通常「財産取得の指定」と「遺言執行者」、「付言事項」を書き入れます。公正証書遺言の場合は、これに「成人の証人2人の署名」が必要になります。

 遺言執行者は、誰がどの財産をどのように取得するのかを確認し、金融機関での預貯金解約、不動産の名義変更手続きなど、遺言書の内容を実行します。

 付言事項には、遺言者の記述の背景にある思いや、理由を書きます。

 書き方によっては、相続人の間で遺産分割協議を行うことなく相続手続きを進めることができることと、相続人以外の人にも財産を遺贈することができる点は、遺言書のもつ、とても大きな効力であると言えます。

 法定相続人がいない場合は、全ての財産が国庫に納められます。それでもかまわないという人はよいのですが、自分なりの希望がある場合は、あらかじめ、どちらかの方法でその意思を明確にされるのがよいでしょう。

 以下に、遺言書を作成したほうがよいと思われるケースと、その理由を示しました。


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 特に配偶者や子供のいない人、家族との関係が疎遠な人は、万全の準備が必要です。それは、死後のさまざまな手続きにおいて、不本意な扱いを受ける恐れがあるからです。

 公証役場では、遺言書、任意後見契約書、死後事務委任契約書の3つをセットで作成する人が多くなってきました。そうしておけば、もしもの時でも受任した人が自分の希望を最大限かなえようとしてくれるのです。

 遺言書を書くことには、抵抗がある人も多いと思います。それは自分の死と向き合うことですから、当然かもしれません。

 もう1つは養子縁組を結ぶ方法です。既に親が他界し、子供がいない場合、前述のとおり、相続人の範囲が兄弟姉妹あるいは甥・姪にまで広がり、複雑化します。子供が1人いれば、相続人はそれ以上に広がることはなく、相続手続きはより簡単に行うことができます。

 養子縁組を行うと、姓が変わり戸籍も移るので、養子縁組は簡単にはできないと考える人が多いと思います。しかし、結婚して夫の姓に変わった女性の場合は、養子縁組を行っても姓が変わらず、夫の戸籍から異動することもありません。夫の了解が必要なのはもちろんですが、関心のある人は自治体の戸籍課に問い合わせてください。

 養子縁組あるいは遺言書のいずれの方法も、判断能力が衰える前に行う必要があります。聖和に向けた備えとして検討してはいかがでしょうか。

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 次回は、「納税と相続放棄」をお届けします。