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ダーウィニズムを超えて 30

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第三章 ドーキンスの進化論と統一思想の新創造論

 スティーヴン・グールド(Stephen Jay Gould)と並んで今日、最も影響力のある進化論者はリチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)である。そのドーキンスが2007年に『神は妄想である』という本を著し、神を否定する急先鋒(せんぽう)となった。

 進化論といえば、今日、世界中で科学的な真理であるかのように受け入れられている。キリスト教をはじめ多くの宗教者たちも、進化論を無批判のまま容認しているようである。しかし、進化論の行きつくところは、まさに神の否定であることを、ドーキンスは先鋭な形で見せてくれた。すなわち、ドーキンスは、「もし本書が私の目論見どおりの役目を果たしてくれれば、本を開いた宗教的な読者が、本を閉じるときには無神論者になっているだろう(*1)」と言い、進化論は徹底的な無神論であることを宣言したのである。

 ギリシャの唯物論哲学に始まり、フランスの啓蒙(けいもう)思想に至る無神論の系譜があったが、ドーキンスによれば、「無神論は……ダーウィンによって初めて、知的な意味で首尾一貫した無神論者になることが可能になった(*2)」のである。

 進化論に対抗しているのは創造論であるが、従来の創造論は宗教の聖典や神話の中で語られたものである。なかでもキリスト教の創造論が最も強力なものであるが、ドーキンスはそれに対して次のように揶揄(やゆ)している。

 ほとんどあらゆる民族がそれぞれの創造神話を発達させており、『創世記』伝説は、たまたま中東遊牧民の一特定部族によって採用されていた説にすぎない。それは、世界がアリの排泄物から創られたとする西アフリカの部族の信仰と比べても、とりたてて特別な地位にあるわけではない(*3)。

 聖書の創世記によれば、神は植物と動物を「種類にしたがって」創造されたのであり、創造以来、今日に至るまで、種は永遠で不変なものと考えられている。ところがドーキンスは「種というものは決してはっきりと定められる始まりをもっておらず、はっきりと定められる終わり(絶滅)をほんのときどきもっているにすぎない。……種は、絶え間なく流れる川を任意に一区切りしたようなものであり、その始まりと終わりの境界を区切る線を引く理由など、とりたててない(*4)」と言って、はっきりと定められた種の存在を否定している。したがって人間を万物の霊長と見て、人間の位置を高めることは誤りであるという。ドーキンスは類人猿と人間の間に断絶はないと主張し、「私たちが心のうちに立てた人間と『類人猿』の間の不連続な断絶は嘆かわしいものである。……神聖視された断絶という現在の立場は恣意的なものであり、進化的な偶然の出来事の結果である(*5)」と言う。

 類人猿と人間との間に断絶はないとすれば、誰か異端的な科学者がチンパンジーとヒトとの雑種を育てることもありえないことではない。その結果、神から人間だけに与えられた、戒めに基づいた絶対的な倫理や道徳は、その根拠を失ってしまう。そして、既存のすべての学術体系は崩壊し、「神学、社会学、心理学、あるいは哲学のほとんどの分科も、元には戻れないだろう(*6)」と、あたかも、そのようなことを期待するかのように語っている。

 さらにドーキンスは、神と宗教に対する敵意をあらわにして、神という観念はミーム——心の中のウイルス——であると言う。あるいは、プラセボ(偽薬)と同様なものであって、実体がなくても、悩める人々、空想的な人々に対して効き目があるのだと言う。そして子供の脳は騙(だま)されやすく、ミームに感染しやすいのだから、ミームを振りまく宗教の餌食にならないように子供を守らなくてはならないと言う。ドーキンスは、公然と神を否定する。まさに、これは神と宗教に対する宣戦布告である。このようなドーキンスの主張に対して、統一思想の見解を述べる。


*1 リチャード・ドーキンス、垂水雄二訳『神は妄想である』早川書房、2007年、16頁。
*2 リチャード・ドーキンス、中嶋康裕他訳、日高敏雄監修『盲目の時計職人』早川書房、2004年、26頁。
*3 同上、500頁。
*4 同上、41920頁。
*5 リチャード・ドーキンス、垂水雄二訳『悪魔に仕える牧師』早川書房、2004年、52頁。
*6 同上、52

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 次回は、「遺伝子は利己的なのか」をお届けします。


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