家族の絆づくり 290
三つの「社会人基礎力」を備える

ナビゲーター:阿部 美樹

自ら前に踏み出す
 「社会人基礎力」という言葉を聞いたことがありますか。
 これは2006年に経済産業省が提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことです。

 成熟した社会人になるためには、どのような能力が必要でしょうか。
 それは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という三つの能力であるといわれています。

 さらにそれらは、12の能力要素から成り立っています。これらの要素は職場や地域社会だけでなく、円満な家庭を築くためにも大切な内容です。
 具体的に紹介します。

 第一の基礎力は、「前に踏み出す力(アクション)」です。
 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力を指します。
 前に踏み出す力には、物事に進んで取り組む「主体性」、他者に働きかけて巻き込む「働きかけ力」、目的を設定し確実に行動する「実行力」の三つの能力要素が含まれます。

考え、チームで働く
 第二の基礎力は、「考え抜く力(シンキング)」です。
 疑問を持ち、考え抜く力を指します。論理的に答えを出すだけでなく、自ら課題提起して解決のためのシナリオを描く「自律的な思考力」が求められます。

 課題の解決や物事の改善には、常に問題意識を持つ姿勢が必要です。課題を見つけたら周囲に問題提起し、十分に納得するまで考え抜いて解決のプロセスを導き出します。この繰り返しが、自律的な思考力を高めることにつながります。

 考え抜く力には、「課題発見力」「計画力」「創造力」の三つの能力要素があります。

 第三の基礎力は、「チームで働く力(チームワーク)」です。
 多様な人々と共に、目標に向けて協力する力を指します。グループ内の協調性にとどまらず、多様な人々とのつながりや協働を生み出す力が求められます。

 個人で大きな成果を上げようとしても、一人でできることには限界があります。しかし多様な人と協働できれば、大きな成果を生み出すことが可能になります。

 特に職場や地域社会では、昨今仕事の専門化や細分化が進んでおり、大きな価値を生み出すには多様な人と協働しなければなりません。

 その際は自分の意見を分かりやすく相手に伝えることに加え、相手の意見や立場を尊重し目標に向けて協力し合える力を磨くことが求められます。

 チームで働く力は、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」といった六つの能力要素から成り立ちます。