2023.10.21 17:00
心をのばす子育て 9
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「心をのばす子育て」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
子育ての本質を理解し、個性に合わせた教育で幸せな家庭を築くための教材としてぜひお読みください。
長瀬雅・著
2、親が子育てのスタート
■「無条件の愛」と「条件付きの愛」
●無条件の愛
親の子供に対する愛で注意すべきなのは、根底に「子供をありのままの姿で受け入れる」という姿勢があるかどうかという点です。良い成績をとってきたからとか、言うことを聞いたからという子供の行動の結果で親の愛情が変わると、子供は不安定になってしまいます。子供はいつも親の期待や要求に常に応えられるとは限らないからです。親は、子供に何があっても「無条件の変わらない愛」で愛することが必要です。
親の愛に不安を感じている子供は大概「いい子」になります。ただし、これは本当のいい子ではなく、仮面をかぶった「いい子」です。親の顔色をうかがって、失敗しないようにと内心ビクビクしながら生きている子供です。親に対して、言いたいことを言えずにいると、いつか爆発します。よくマスコミで問題を起こした少年を近所の人が「小さいころはいい子だった」「礼儀正しくておとなしかった」と言います。このように、他人から見るといい子なのですが、子供は無理をしていたのでしょう。子供はそんなに親の願いどおりには動きません。
そして、無理はいつか爆発します。外に爆発して暴力を起こす場合と、内部で爆発して内部崩壊を起こす場合があります。この外に爆発した時に世間は「切れた」と言うのです。どうして切れるまで気がつかなかったのでしょうか。実は、「いい子」に対する評価が違っていたのです。どういう子供が「本当のいい子」なのかの判断基準が違っていたので、過ちに気がつかなかったのです。
例えば、幼児期に順調に成長している子供は、好奇心旺盛ですから落ち着きもなく、ケンカも多く、時には親にも逆らうものです。親の願うような「いい子」ではありません。親に一切逆らわない子、そんな子供は親にとってはいい子でも、逆に不安な子供、仮面をかぶった子供です。親にとって「都合のいい子」だったのです。そして、この子供は大人になるに従い、他の人に対しても同じ態度を取るようになります。
●アダルト・チルドレン
「アダルト・チルドレン」という言葉があります。アメリカのクリントン元大統領も自分がアダルト・チルドレンであると発表しました。このアダルト・チルドレンという言葉は、最初アル中(アルコール依存症)の親の家庭で育った子供のことを指しました。彼らは人と話をするのに緊張したり、人に頼まれたら嫌だと言えなかったり、失敗を怖がってしまったりして、人間関係がうまくつくれないといった特徴がありました。そうなる原因を調べたところ、幼児期に育った家庭に原因があるということが分かってきました。アル中の親の暴力に対して恐怖を抱き、親に逆らうことができず、親の顔色を見ながら育っているうちに、他の人に対しても同じような反応を示すようになったのです。失敗したら親から愛されないという不安があるから、人の顔色を見て、失敗しないようにと気を遣うのです。
人に気を遣うのは当然のことですが、そこに恐怖を感じたりするのであれば問題です。常に自分がいい子でいようと無理をしてしまって、最後に苦しくなって倒れてしまうのです。このアダルト・チルドレンという言葉は現在アル中の家庭だけでなく、崩壊した家庭で幼児期を過ごしてきた子供一般に使われています。
それほど幼児期の家庭環境、親の接し方が子供の精神に大きな影響を与えます。最近多くなってきた幼児虐待を調べると、その親も幼児期に虐待を受けていたことが報告されています。幼児期に受けたものは大人になっても心に残り続けます。できるなら「愛の心」を残したいものです。
●条件付きの愛
子供をあるがままに受け入れるという、無条件の変わらない愛が子育てにとって最も大切です。しかし、ここで気をつけなければならないのは、すべてを無条件にすると何をやっても良いということになってしまい、甘やかしにつながることがあるということです。心理カウンセルでは無条件の愛を強調します。ただ、これはあくまでも精神療法であるということを理解しなければなりません。すべてを無条件にすると、「たばこやシンナーもいい」「セックスも自由にしたらいい」、すべては人生勉強だという極端な発想も出てきます。
条件を付けることは良くないように思えますが、躾(しつ)けや訓練をするということは条件の愛なのです。子供は純粋で、きれいだというイメージがありますが、現実の子供は時には残酷なものです。平気で虫や小動物を殺しますし、また悪賢く親をだますこともあります。ですから子供には、やってはいけないこと(善悪観)、やらねばいけないこと(義務感)、結果に責任をもつこと(責任感)などを教えなければいけません。これが「躾け・訓練」です。悪いことをやっても親の態度が全く変わらなかったら、子供は認められたと思い、その後平気で悪いことを続けます。善(よ)いことをしたら誉(ほ)めてやり、悪いことをしたら叱(しか)らないといけないのです。何でも無条件に認めるわけにはいきません。
結局、「無条件の愛」と「条件付きの愛」は両方とも必要なのです。問題はどちらが主体なのかということです。基本的には「無条件の愛」が主体でなければなりません。ただ、状況により「条件付きの愛」を表面に出すこともあります。この無条件の愛と躾けの条件付けの愛を子供に伝えるには少し工夫が必要です。とかくどちらかに偏ってしまいがちだからです。
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次回は、「行動と本人を分ける/適正な条件」をお届けします。