2023.10.10 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
ハマスがイスラエルを軍事攻勢
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、10月2日から8日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
米下院議長が解任、造反で可決(10月3日)。フィリピンが中国を強く非難、衝突寸前、南シナ海で接近か(4日)。プーチン大統領「日本と対話する用意」(5日)。米バイデン政権、国境の壁建設へ(5日)。ノーベル平和賞、イランの女性人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏(6日)。ハマスがイスラエルに数千発のロケット攻撃開始(7日)、などです。
10月7日、ハマス(パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織)がガザから数千発(2500発以上)のロケット弾をイスラエル領内に打ち込みました。
さらに、境界を越えてイスラエル南部の町に戦闘員数十人を侵入させ、銃撃戦を起こしたのです。
テルアビブやエルサレムでは、対空防衛システムでロケット弾を迎撃(「アイアン・ドーム」によって)しましたが、一部は着弾したのです。ガザからエルサレムにロケット弾が飛んで来たのは初めてのこと。今後、大きな戦争につながる可能性が出ています。
7日時点では、イスラエルでは少なくとも40人が死亡、700人以上が負傷、数十人のイスラエル人を人質にしてガザに連行した模様だと報じられています。
イスラエル側の反撃によってハマス側も死者が出ており、双方の死者は合わせて約300人に達したと見られます。
さらにイスラエル保健省は8日、イスラエル側の死者は民間人を含む600人以上に達し、負傷者は2000人に上り、住民約100人が人質としてガザに拉致されたと報告しました。事態が急激に悪化していることが分かります。
ハマスの軍事部門カッサム隊のムハンマド・ディフ司令官は声明を出し、「(イスラエルの)占領による犯罪を終わらせる決意をした」と述べ、軍事作戦の開始を宣言しました。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は7日、「われわれは戦争状態にある」と語り、「敵はこれまでにない代償を払うことになる」と述べました。
イスラエルは数万人規模の予備役を招集する計画であり、ハマスへの報復として戦闘機によるガザへの空爆を開始しました。ネタニヤフ政権は全土に非常事態を宣言しています。
このような事態がなぜ起こったのかを説明します。
ハマスとイスラエルの大規模戦闘は2021年以来だけでも5度目になります。しかし今回の事態の深刻さは異例です。
7日はユダヤ教の休日「シャバット」(安息日)で、ハマスはその隙を突いて攻撃したと思われます。
さらに6日は、イスラエルがエジプトとシリアから奇襲攻撃を受けた第4次中東戦争開始から50年目の節目でもありました。
ハマスがこの時期に異例の攻撃に踏み切ったのは、米国が仲介する形で進むイスラエルとアラブの盟主サウジアラビアとの国交正常化交渉への「けん制」と見られています。
今後、甚大な被害を受けたイスラエルによるガザへの地上侵攻は必至と見られており、戦闘の長期化が懸念されています。
米国のブリンケン国務長官は8日、ハマスによるイスラエル攻撃について、同国とサウジアラビアの関係正常化の妨害が狙いだったとの見解を示しました。
そして、敵対するイランの関与に関しては「攻撃を指示したり、背後にいたりしたという証拠はまだ見つかっていない」と語りながらも、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化に反対しているのは、「ハマス、(隣国レバノンのイスラム教シーア派組織)ヒズボラ、イランだ」と指摘。ハマスによる攻撃は「サウジとイスラエルを結び付ける取り組みを妨害する動機があったとしても驚かない。一因なのは確かだ」と表明しました。
この事態が今後、どのように波及していくのか、注目する必要があります。
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