終活ポイント講座 6

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

9 遺産相続への備え
 財産の所有者が聖和すると、相続によって次の所有者が決まります。一言で相続といっても、血縁者であれば誰でも財産を相続できるわけではありません。聖和した人(被相続人)とどのような続き柄であれば相続人になるということが、法律により定められています。この相続できる立場の人を「法定相続人」と呼んでいます。

 配偶者は常に相続人として認められていますが、血縁者には優先順位があります。ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係が成立している人のみになります。離婚した段階で相続人から外れますが、その場合、子供はどちらに育てられたとしても、相続人からは外れません。

 法定相続人の範囲とその相続割合は、次のとおりです。

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①配偶者と故人の子供〈配偶者が2分の1、残りを子供で分ける〉

 聖和の時点で配偶者が存命であれば、常に相続人になります。次に血縁者の中で子供が相続人の範囲に含まれ、それ以外の人は相続人とはなりません。もし子供の中で亡くなっている人がいる場合は、代わりにその子供(孫のこと)が代襲相続人となります。また配偶者が既に亡くなっている場合は、子供のみが相続人です。

②配偶者と故人の親〈配偶者が3分の2、残りを親が相続する〉

 故人に子供がおらず、親が存命である場合、配偶者と親が相続人です。親が亡くなって祖父母が存命の場合は、親の代わりに祖父母が相続人となります。故人に配偶者がいない、もしくは既に亡くなっている場合は、親のみが相続人です。

③配偶者と故人の兄弟姉妹〈配偶者が4分の3、残りを兄弟姉妹で分ける〉

 故人に子供と親がおらず、兄弟姉妹が存命である場合、配偶者と兄弟姉妹が相続人です。兄弟姉妹の中に既に亡くなっている人がいる場合は、その子供(甥〈おい〉や姪〈めい〉)が相続人になります。

 故人に配偶者がいない、もしくは既に亡くなっている場合は、兄弟姉妹のみが相続人です。

・養子の場合
 養子縁組の手続きを行うと、親子の血のつながりがなくても、法律上は「実子」と同じ立場になり、法定相続人として認められています。

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 遺産について法定相続人の間で話し合った結果、全員が分割内容に合意できれば、どのような割合で分割してもかまいません。例えば、1人の相続人が全ての財産を相続することもできます。しかし、実際に話し合ってみると、人によって考えが違い、結論に至るまでに時間がかかることがあります。

 相続される財産が多ければ争いも発生しやすいのですが、だからといって「財産が少ないから、相続の際にもめるはずがない」とは言い切れないのです。少ないなら少ないなりに、誰が何を相続するのかについて、相続人の意見が対立することがあります。

 なかなか話し合いがまとまらないときは、法律で定められた「相続の割合の目安」(法定相続分)を参考にします。しかし、これで遺産分割案を作成しても不服のある相続人がいる場合は、家庭裁判所に調停を申し立て、解決を図ろうとする人もいます。

 平成30年度の家庭裁判所における遺産の価額別「認容・調停」成立件数は、次のとおりです。

 不動産などを含め、財産を金額に換算し、総額で1千万円以下の事案が32.9パーセント、1千万円を超え5千万円以下の事案が43.2パーセントと、両者で全体の4分の3を占めています。したがって、財産が少なくても、もめるときはもめてしまうのです。

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 次回は、「相続の手順」をお届けします。