総合相談室 Q&A 第12回
発達障害をどう理解し、対応したらいいですか①

回答:臨床心理士・大知 勇治

 この内容は、『TODAY'S WORLD JAPAN(トゥデイズ・ワールド ジャパン)』2013年7月号の「総合相談室Q&A」から抜粋したものです。「総合相談室Q&A」は、動画版(U-ONE TV/全16回)でもご覧いただくことができます。

Q1 前回は、障害全般についてのお話をしていただきました。今回は、発達障害についてお話しください。

A1 発達障害は、発達障害者支援法の第二条1項で、次のように定められています。
 「この法律において『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」
 他にも政令で細かく定められていますが、一般的によく見られるのは、学習障害、注意欠陥多動性障害、広汎性発達障害の三つでしょう。発達障害者支援法が平成16年度に定められたことでも分かるように、発達障害は比較的新しく認められてきたものです。発達障害が注目される大きな理由の一つに、その発現割合が高いということが挙げられます。
 平成14年度の調査の結果、小・中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、約6.3パーセントに発達障害の可能性があるということが分かりました。これは、40人学級だと約2.5人の割合ということになります。
 私は、大学院に入って、発達障害の勉強をしましたが、その頃、1990年代の初頭は、今のように多くの発達障害の子供たちには出会いませんでした。明らかに、増えていると思います。特に、アスペルガー症候群は、以前に比べて増えていると感じますね。

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Q2 なぜ、増えているのでしょうか?

A2 その理由ははっきり分かっていません。以前、米国の研究機関の報告で、発達障害が増えていることについて推定される理由として、食品添加物や、環境ホルモンや周囲の化学物質の作用、特に女性のアルコールやタバコの摂取量の増加などが挙げられていました。ただ、あくまで推定で、確実な因果関係は明らかになっていません。

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Q3 学習障害、注意欠陥多動性障害、広汎性発達障害など、どれも聞いたことはある名称のようにも思いますが、これらに共通する特徴はありますか?

A3 幾つか共通する特徴があります。まず、どの障害も脳の中枢神経系の問題と推定されていますが、はっきりとした原因は分かっていません。ですから、今の科学では、治療方法が見つかっていないのです。
 また、障害であることが分かりにくいというのも共通する特徴です。これらの障害が確実に診断できるのは小学校に上がってからです。もちろん、それ以前でも特徴がはっきりと確認できる場合は、就学前でも診断されることはありますが、多くの場合、小学校に入ってからはっきりとしたり、中学生になってから初めて診断されたり、あるいは大人になってから初めて自分は発達障害だったということが分かったり、というかたもいます。
 多くの場合、小さい頃は、やる気がない、わがまま、自分勝手、躾(しつけ)ができていない、などと勘違いされてしまいます。その結果、本人は傷つき、親も周囲から責められて孤立してしまうことが多いです。

 周囲の理解と適切な支援があれば自立した生活を送れるケースが多いということも、特徴に挙げていいと思います。
 また、男性と女性の間で出現率に差があり、男性の方が女性よりも発達障害の割合が高いというのも特徴です。
 当たり前なのですが、発達障害は子供だけではなく、大人にもあります。子供の発達障害は注目されることが多いのですが、治らないまま成長しますから、当然発達障害を持つ大人もいます。この、大人の発達障害については、後でまた説明します。

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Q4 なるほど、特徴を一口で言えば、理解されにくいけれど、周囲からのきちんとした支援があれば自立した生活ができるということですね。

A4 もちろん例外はありますが、一般的にはそう考えていいと思います。

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Q5 男性の方が女性より出現率が高いというのは何か理由があるのでしょうか?

A5 今のところ考えられているのは、脳の使い方に男女差があり、その使い方の違いが出現率の違いになっているということです。具体的に言うと、男性は脳を局所的に使い、女性は脳をより全体的に使います。分かりやすく言えば、何か考えたり行動しようとするときの脳の状態を調べてみると、一つの思考や動作に対して、男性は比較的脳の狭い範囲を使いますが、女性は同じ思考や行動でも、より広い範囲を使います。
 発達障害というのは、脳の中枢神経系の一部にダメージを受けることが原因で発現します。男性は、そのダメージを受けた部分を使う作業が難しくなってしまいますが、女性はより広い範囲を使う分、ダメージを違うところで補って対応していると考えられるのです。
 ですから、同じように中枢神経系の一部にダメージを受けても、女性より男性の方が、発達障害としての症状が現れやすくなると考えられているのです。(続く)

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 次回は、第13回「発達障害をどう理解し、対応したらいいですか」をお届けします。