2023.09.10 22:00
ダーウィニズムを超えて 23
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第二章 進化論を超えて─新たな展望
(二)自然選択からデザインへ
(2)ホックス遺伝子
ハエの触覚が脚になったりするなどという、昆虫の付属構造の異常をホメオシスというが、それに関係している遺伝子がホメオティク遺伝子である。そして各種のホメオティク遺伝子は、ホメオボックスという共通の塩基配列を持つことがわかってきた。ホメオボックスは、発生途中で生物の成長パターンをコントロールする遺伝子、すなわち形態形成遺伝子であると考えられている。ホメオボックスを持つ一連の遺伝子はホックス遺伝子(HOX遺伝子)と呼ばれる。
人間のDNA配列の98.5パーセントはチンパンジーと共有しており、しかも、両者は同じオペレータ、またはマネジャーとしての遺伝子──ホックス遺伝子──を持っていることが知られている。
イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャーによれば、「HOX遺伝子は人間をはじめ、多くの動物の身体を作る作業を統括するマネジャー(*35)」であり、「HOX遺伝子は発生の段階で、どこの遺伝子をいつオンにするかをコントロールして、その体を作っていく(*36)」のであり、ホックスファミリーは「遺伝子社会の最高経営者」である(*37)。サイエンスライターのカール・ジンマーも「ホックス遺伝子は、他の遺伝子のスイッチをコントロールする大元のスイッチ(マスター調節遺伝子)として影響力を行使する(*38)」と言う。
それでは人間とチンパンジーや他の動物を区別するものは何であろうか。マネジャーであるホックス遺伝子の出す指令がそれぞれ異なるからだ、つまり、ホックス遺伝子をコントロールしている存在があるというのである。
そもそも、遺伝子のスイッチであり、マネジャーであるホックス遺伝子はいかにして生じたのであろうか。さらにホックス遺伝子という調節因子をコントロールしているのは何であろうか。ワグナーは「何が、調節因子を調節するのだろう? 答えは単純で、さらに多くの調節因子である(*39)」と言う。進化発生生物学(エボデボ)のリーダーであるショーン・B・キャロル(Sean B. Carroll)も、遺伝子のスイッチをオンにしたり、オフにしたりするのも、また遺伝子スイッチであるという(*40)。これでは原因の先送りであり、真の解明ではない。結局、ホックス遺伝子がいかにして生じたのか、そしてホックス遺伝子をコントロールしているものは何なのか、不問のままになっているのである。
ここにホックス遺伝子を生じせしめ、ホックス遺伝子をコントロールしている、宇宙意識に由来する生命の波動を認めなくてはならない。生命の波動はロゴスを伴っているのであり、そこには設計図すなわちデザインが含まれているのである。
*35 イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー、野中香方子訳『遺伝子の社会』NTT出版株式会社、2016年、9頁。
*36 同上、205頁。
*37 同上。
*38 カール・ジンマー、渡辺政隆訳『進化大全』光文社、2004年、168頁。
*39 アンドレアス・ワグナー、垂水雄二訳『進化の謎を数学で解く』文藝春秋、2015年、196頁。
*40 ショーン・B・キャロル、渡辺政隆・経塚淳子訳『シマウマの縞、蝶の模様』光文社、2007年、150頁。
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次回は、「エピジェネティクス/生物種の爆発的な出現の謎」をお届けします。