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終活ポイント講座 2

 『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。

※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。

3 高齢者福祉施設
 デイサービスの利用とヘルパーの来訪で暮らしていけるうちはよいのですが、時間の経過とともに介護が家族の負担になることもあります。そのため、高齢者を受け入れる福祉施設が全国的に運営されています。

 この施設は種類が多岐にわたりますが、その中の代表的なものを説明します。入居希望者の状況を踏まえ、あらかじめよく調べた上で利用するようにしてください。

(1)公的な高齢者福祉施設

①養護老人ホーム
 高齢者の中には、仕事に就くことが難しく、年金などの収入も乏しいため、生活苦に陥っている人がいます。そのような場合に、住まいを提供し、社会復帰を促す目的で設置されている老人福祉施設が、養護老人ホームです。

 自立して生活できる高齢者向けで、食事の提供や健康管理などの支援を行います。レクリエーションや地域との交流イベント、入居者によるサークル活動などが行われる老人ホームもあります。

 入居の費用は、本人と扶養義務者の収入の状況により決められ、生活保護を受けている場合は、減額もしくは免除の対象となります。

 自治体への入居申請が必要ですが、定員に空きがあるからといって必ず入れるわけではありません。本人と扶養義務者に関する調査の上、入所判定委員会が受け入れの可否について判定します。

 介護保険は基本的に適用されず、しかも長期利用を想定した施設ではありません。

②特別養護老人ホーム(特養)
 介護が必要なかた向けの公的施設です。入居条件は「要介護認定3以上」と定められています。社会福祉法人や地方自治体が運営しています。

 介護保険が適用できるため、そのぶん自己負担額を抑えられます。入居一時金などが不要で長期利用が可能なため、人気があります。ただし、自宅に同居している家族がいる場合は、基本的に入居できないことになっています。

 またこれとは別に、「介護老人保健施設」(老健)があります。主に医療ケアやリハビリテーションを必要とする、要介護状態の高齢者を受け入れています。入居して介護サービスを受ける点では特養と似ていますが、在宅復帰を目指すためリハビリを行い、一定期間で退去することになっています。

③介護医療院
 要介護の高齢患者に対して、医療、介護、生活の場を提供する施設が介護医療院です。以前の介護療養型医療施設を引き継ぐ形で、2018年にスタートしました。

 医師が常駐するため、投薬や処置、検査なども行われ、喀痰(かくたん)吸引や経管栄養など、医療ニーズの高い要介護者に対応できる施設です。入院者が寿命を迎えた場合には、「看取(みと)り」を行います。

 ほかの介護施設と同様に、入浴、排泄、食事などの介助のほか、洗濯や掃除といった日常生活上の世話も行っています。

(2)民間の高齢者福祉施設

「有料老人ホーム」

 食事や洗濯、掃除などの家事のほかに、健康管理などのサービスを提供し、高齢者が日々の生活を快適に送ることに配慮された施設です。「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類に分けられ、入居一時金と月額利用料が必要になります。

①介護付き有料老人ホーム
 要介護状態の方が生活できる施設です。看護スタッフなどの医療体制が整い、食事、入浴、排泄などの介護を施設所属の介護職員が行います。入居費用は比較的高額になる場合が多く、夫婦でも一方の介護度が低かったり自立できる場合は、夫婦一緒の入居ができない施設が一部にあります。

②住宅型有料老人ホーム
 主に自立度の高い人や介護度の低い高齢者を対象とし、厚生労働省が管轄する施設です。

 イベントやレクリエーションなどが充実しています。入居時に一時金を支払い、居室と共用施設を利用する権利と、介護や生活支援サービスを受ける権利が、生涯保障される契約を結びます。

 施設自体では介護サービスを提供しないため、要介護の方が入居する場合は、居宅介護支援事業所や訪問介護、通所介護など、在宅介護者向けの介護サービスを併せて利用する必要があります。

 食堂やリビングなど、共用スペースが設けられ、入居者同士の交流を深めることができるようになっています。

③健康型有料老人ホーム
 介護サービスを必要としない高齢者に特化した施設で、「独り暮らしでは万一の時に不安がある」高齢者が入居対象です。そのため、介護が必要な方は原則として入居できません。

(3)その他

①サービス付き高齢者向け住宅
 手すりの設置や段差の解消など、バリアフリー化された賃貸住宅で、国土交通省が管轄しています。住宅なので、基本的には自立して生活できる方が対象です。住宅部分について「建物賃貸借契約」を交わし、生活支援サービスについては、別途サービス利用契約を結びます。

②グループホーム
 高齢者が少人数で一緒に生活する住宅です。料理や掃除などを役割分担しながら、共同で生活します。

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 次回は、「医療保険制度/救急情報カードと緊急通報システム」をお届けします。