2023.09.03 13:00
終活ポイント講座 1
『祝福家庭』(2020年春季号、夏季号、秋季号)に掲載された「終活ポイント講座」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
「老後」と「聖和」に対する備えに関して、行政書士の石原登文先生(6000双)に解説していただいています。
※法律や制度は2020年9月時点のもので、今後、変わることがあります。
現在、日本人の平均寿命は、男性約81歳、女性約87歳(厚生労働省「平成30年簡易生命表」)です。人によって多少の違いはありますが、誰もがやがて地上生活の終焉(しゅうえん)を迎えます。生きている間に「身の回りの整理」や「財産の整理」、そして「心の整理」をしておく必要があると思います。
1 超高齢社会
行政上の区分では現在、65歳以上を「高齢者」と位置づけ、この高齢者の割合が7パーセント以上の社会を「高齢化社会」と呼んでいます。14パーセント以上の場合は、高齢化の「化」を取り、「高齢社会」、21パーセント以上を「超高齢社会」と呼びます。
日本は現在、この高齢者の割合が28.1パーセント(2018年9月現在。総務省統計局)で、「世界で類を見ない超高齢社会」と呼ばれています。
高齢者の年齢区分については、65歳から70歳ぐらいまでは現役で働く人が増えている現状をもとに、今後、見直されると考えられています。将来的には70歳か75歳以上を高齢者と呼ぶようになるかもしれません。
2 介護サービス
少し前までは、「平均寿命」の数値が世間の注目を集めていましたが、最近は「健康寿命」のほうに関心が移っています。健康寿命とは、人の世話にならずに自立して生活できる年齢の平均値です。これは先述の平均寿命をもとに、そこから寝たきりや認知症など、介護状態の期間を差し引いた数字です。男性は約72歳、女性は約74歳(内閣府「平成30年版高齢社会白書〈概要版〉」)です。
・自立した生活の基準と介護
日本を含めた先進国の傾向として、かなり前から親と同居しないケースが増え、核家族化が進行しました。そして年老いた夫婦の「老老介護」が、次第に社会問題化してきたのです。
また子供世代が同居していたとしても、1人に重い負担が強いられることで、「介護疲れ」から不幸な事件に発展することもあり、社会的な介護サービスの整備が急ピッチで進められてきました。同時に、その運用を費用面でサポートするための「介護保険制度」も作られました。
介護認定に際しては、まず自立した生活ができているかどうかが一つの判断基準になります。自立した生活とは、“歩く、起き上がる、薬を飲む、電話を掛ける”などの行動が、一人でできるということです。
・「介護認定」について
現在65歳以上の方には、自治体から「介護保険証」が届けられます。
これは要介護者が、どのレベルの介護を必要としているのかを公平に判定し、判定後に要介護度が記載された保険証と差し替えられることで、介護保険内でのサービスの利用が可能となります。
介護認定を受けるためにはまず、近くの「地域包括支援センター」に相談し、居住する市区町村の役所内の「介護保険担当窓口」で、申請を行うことになります。後日、「介護認定調査員」による調査があり、さらに「介護認定審査会」で審査が行われます。その結果、要介護度とサービス内容の上限が決まります。
要介護認定でチェックされる主な項目は、①身体機能・起居動作、②生活機能、③認知機能、④精神・行動障害、⑤社会生活への適応―などです。
これらの調査結果をもとに、要介護度の7つのレベルのいずれに該当するのかを判定します。
次に地域包括支援センターを通じて「ケアマネージャー」が紹介され、介護に関する契約を結びます。その結果、ケアマネージャーが「あなたはこういう症状ですから、このようなケアはどうでしょうか」と、最適な介護プランを提案してくれます。
介護サービスの種類と量が決まった段階で、初めて「介護保険サービス事業者」と利用者との間で契約を交わすことができ、介護サービスを利用できるようになるのです。
・サービスの具体的な中身
介護サービスには、通所型(デイサービス、デイケアなど)と訪問型(訪問介護、訪問看護など)の2種類があります。デイサービスとは、日帰りで施設に通い、食事や入浴など日常生活上の介護や機能訓練を受けるサービスです。
施設で他の利用者や職員と接することで、引きこもりや孤立を防ぎ、また自宅で介護する家族の負担を軽減できます。
訪問介護は、ヘルパーが自宅に来て介護してくれるものです。食事や排泄(はいせつ)、歩行、入浴の介助など、直接本人の体に触れて世話をしてくれます。そのほか、部屋の掃除、洗濯、調理など、日常生活をサポートしてくれます。
いずれの場合も、費用の本人負担額は基本的に1割。残りの9割は、保険料と公費負担などでまかなわれます。
この本人負担の割合は、収入に応じて2割から3割に増える場合があります。その場合も、極端に負担が重くなることはなく、上限額が設定されています。
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次回は、「高齢者福祉施設」をお届けします。