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神様はいつも見ている 18
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第2部 姉が統一教会へ
5. 3年間、泣き暮らした母

 怒り心頭に発した私は、床に叩きつけた『原理講論』をにらみつけながら、姉を問いたださねばならないと思った。
 姉はその時まだ実家にいたので、私はすぐさま収まらない怒りをそのまま姉にぶつけた。

 「神棚に何をしたんや!」

 姉は私の顔をまじまじと見ながら、ばれたと思ったのか、薄笑いを浮かべているようにも見えた。

 「あれはテツオのためにと思って…」

 「言い訳すんな!」

 到底許すことができなかった。
 気が付いた時には、そこに兄の子(おい)が一緒にいることも忘れて、いきおい私は姉を殴っていた。

 後に私は統一教会(現・家庭連合)に入会することになるのだが、おいはこの日のことをよく覚えていて、「あの時、おばちゃんのこと殴ったよね。思い切り殴ったよね」と事あるごとに口にするようになる。

 姉の行動は人間の道理を外れているという思いが私にはあった。

 私の家は普通の家ではなかった。
 ダンプカーと衝突事故を起こして死にかけていた父が、神様によって救われたという家である。

 その上、神様のおかげで商売も繁盛していた。神様がお客さんを連れてくるというお助けによって、家も教会も繁栄していたのだ。

 その恩を忘れて、他の宗教に行くなどということは考えられなかった。忘恩の徒と言うしかなかった。人間以下の畜生のような所業だと思った。

 姉の問題で一番苦しんだのは母だった。

 その頃、母が教会を始めてから、すでに20年近くの歳月が過ぎていた。
 母の無償のお勤めによって、多くの人々がその恩恵を受けていた。

 「あそこに行けば病気を治してくれるし、いろいろな問題を解決してくれる」という評判が定着していた。
 それなのに、「一番の信者であるべき家族の娘が、教会を捨てて統一教会へ行ったのはおかしい」と騒ぐ者が少なくなかったのである。

 「親子関係が悪いのではないか」

 「本当は神様が憑(つ)いていないのではないか」

 信者は言いたい放題で母を批判した。あることないこと、うわさを流した。
 それがどれほど母の胸を痛め傷つけたか分からない。

 それは信者だけにとどまらなかった。
 母は神懸かりになって以来、神道の儀式や作法を学ぶために、神道の教会に通って修行を重ね、教えを受けていた。その同僚や先生に当たる指導者からも、娘が他の宗教に行ったことを批判され、陰口をたたかれた。

 「人を救う前に、ご自分の子供を救いなさいよ」

 「神様に本気で仕えているの?」

 「もっと真剣に神様のお勤めに励みなさい」

 それでも、母は家の商売を手伝い、悪口を言うその人たちのために、毎晩8時から夜中の1時過ぎまで、無報酬で加持祈祷を続けた。

 この心ないうわさや陰口、批判が、母には一番こたえたようだった。
 母は心の中に、「こんなにも神様に恩返しをしているのに、こんなにも人のために尽くしているのに、どうして娘が他の宗教に行かなければならないのか」という思いを抱えていた。

 「私の修行が足りないのだろうか?」

 「それとも、私の子育てが間違っていたのだろうか?」

 どんなに悩んだことか。

 「お父さんがけがをして死にかけた時も、毎日の修行も、お勤めもつらいとは思ったことはなかったけれど、娘のことではつらくてつらくて、本当に泣けて泣けて仕方がなかったわ」

 母は誰にも相談できず、後に私だけに「あの子が出ていってから3年間、泣き暮らした」と語った。

 そんな母の姿を知っていたので、私は姉と一生縁を切ることを決意していた。
 姉の信仰がどうのこうのというよりも、姉の義理人情に欠ける振る舞いが許せなかった。
 殴ったことは悪かったけれども、母のことを思えば、そうせざるを得ない私だったのだ。

(続く)

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 次回は、「妻との結婚、神様に判断を仰ぐ」をお届けします。