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平和の大道 46
未来創造プロジェクト

 皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
 同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
 Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!

佐藤 博文・著

(『平和の大道-国際ハイウェイ・日韓トンネル-』より)

 今回は、国際ハイウェイという夢のような超ビッグプロジェクトを実現するために関係者が持つべき心構え、発想法について論じる。というのは、いかなることにもプラス的な有利な点と、マイナス的な不利な点があり、成功するかどうかは、マイナスをプラスに変え得るかどうかという創造性如何にかかっているからである。創造性がなければ、たとえ有利な条件に恵まれていたとしても、個人であれ、組織、団体、国家であれ、発展し成功することは難しく、衰退し失敗する運命にあるからである。

過去型思考から未来型思考へ

 国際ハイウェイプロジェクトがいかなるタイプの事業であるかというと、「高規格の世界的な交通システムの構築による世界平和の実現と新文明の創造」を目的とした、長期的で包括的な「未来創造型プロジェクト」であると言うことができる。過去や現在の延長線上で考えてなすところの事業ではない。

 過去や現状中心の視点から出発して、経済効果、国民感情、国際情勢、資金調達等を考えれば、マイナス的な指標が多く、「する必要がない」、「実現が難しい」、「実現したとしても効果が薄い」という消極的な反応しか返ってこない。

 「日韓トンネルは本当にできるのか」、「経済効果はあるのか」、「10兆円の資金の目処はあるのか」という質問をよく受ける。しかし、このような思考は過去型思考であり、未来を創造するという観点からの思考ではない。この種の思考の陥穽(かんせい)にはまれば、客観情勢が好転するまで何もしないで様子を見ようということになり、日韓トンネル建設や国際ハイウェイ建設の推進は一歩も進まなくなる。

 未来は、冒険し、挑戦して、新しく創造する以外に開けない。過去の知識、経験はほとんど役に立たない。未来型思考は既存の知識を学習することによっては成されない。必要なのは知識より空想力であり、仮設設定能力である。まず空想力(想像力)により仮設(構想)を立て、その上で実験、実践していく中で未来が開けてくる。実現するまで諦めずに信念を持って行動を続けていく以外に道は開けない。

 言い換えれば、国際ハイウェイプロジェクトの推進は、第一義的には、「理念」、「ビジョン」、「戦略」を明確にする戦いであり、それをしっかりと固めた上で、これを推進力として進めていくことが肝要である。このような方法は非現実的で遠回りのように見えるが、実はこのことが国際ハイウェイプロジェクトを推進していくにあたり、方法論でもある。これらがしっかり確立していないと、長期間にわたる事業であるため、途中で信念自体が揺らいで、道半ばで挫折するようになるからである。

 次は実践である。一般的に、未来創造の実践過程にはいわゆる「失敗」というものはない。たとえ実践して上手くいかなかったとしても、それは失敗ではなく、経験であり、未来に関する「経験知」という、実践した人でしか分からない、他の誰も知らない貴重な知識の獲得になる。未来のことは誰も知らない未知の分野であり、やってみなければ分からない世界である。勇気を持って実際に挑戦してみることが重要であり、冒険し、身をもって経験し、経験知を一つずつ積み重ねることにより、未来の成功への方向性を見出す以外に道はないのである。

 リスクや失敗を恐れて挑戦しないこと、冒険しないこと、そのような姿勢が一番の脅威であり、それが本当の「失敗」である。いわゆる「リスク(危険)」という経営学上の用語があるが、未来創造の分野においては、リスクは危険ではなく、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ということわざもあるように、むしろ「未来への投資」と解釈すべきである。

理念・ビジョン・戦略

 この三つの概念はワンセットである。理念は、願望、理想、志、目的とも言うべきものであり、ビジョンの前提となるものである。ビジョンは理念が実現した時の具体的な見える姿・形であり、戦略は、ビジョンを実現するための「これしかない」というレベルまで絞り込まれ選択された、最適で実現可能な手段である。戦略には観念的ではなく現実的で具体的な内容が必要である。

 これを山登りに例えてみよう。登りたいと思う山に登って頂上から見たすばらしい眺望を楽しみたいというのが「理念(願望、目的)」であり、目指す山の頂上に登り山頂から見渡す時の景色が「ビジョン」である。頂上に到達するための多くの選択肢の中から選ばれた、最も容易で実現性の高い最短ルートが「戦略」である。あれもこれもなすことは戦略とは言えない。可能な限り情報を収集し、知恵の限りを尽くし練りに練って、手段を絞り込み、目的実現性と整合性をつけたものでないと戦略にはならない。

 未来型思考の核心は、理念、ビジョン、戦略を一体として考えることである。よく「何々戦略」ということが言われるが、理念やビジョンに裏付けられていない戦略は、単なる行動方針に過ぎない。

 次回から国際ハイウェイの「理念」、「ビジョン」、「戦略」それぞれについて論じることにする。

(『友情新聞』2015年4月1日号より)

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 次回は、「プロジェクトの理念」をお届けします。


◆『平和の大道 ―国際ハイウェイ・日韓トンネル―』を書籍でご覧になりたいかたはコチラへ(韓国語版もあります)


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